
東京都大田区田園調布1-61-10
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食物アレルギーが痒みの原因??
治らないかゆみの原因とは?
愛犬や愛猫が、体を掻きむしる姿を見るのは本当につらいと思います。動物病院で「アレルギーかもしれません」と言われ、アレルギー検査を受けた経験のある飼い主様も多いのではないでしょうか。
残念ながら、「検査結果=食物アレルギーの確定」ではないという事実も知っておく必要があります。
動物の皮膚科・耳科を専門とする獣医師の視点から、食物アレルギーの診断における血液検査の限界と、信頼性の高い診断法である「除去食試験」の重要性について、詳しく解説します。
「食物アレルギー」の定義と症状
皮膚病の原因は一つではない
犬や猫の皮膚病の原因は多岐にわたります。
1.アトピー性皮膚炎(環境アレルゲン):花粉、ハウスダストマイトなど、環境中の物質に対するアレルギー。
2.ノミ・ダニ:ノミの唾液や疥癬などの外部寄生虫によるアレルギーや皮膚炎。
3.細菌・真菌感染:マラセチアやブドウ球菌などによる感染症。
4.食物アレルギー:特定の食べ物に含まれるタンパク質に対する免疫の過剰反応。
食物アレルギーが原因で皮膚炎を起こしているケースは、皮膚病全体の約10%程度と言われています。つまり、食物アレルギーを疑う前に、他の原因(特にアトピーや感染症)をしっかりと除外することが重要です。
食物アレルギーの主な症状
食物アレルギーの症状は、主に強いかゆみとして現れます。
アレルギー検査の実際
当院で行う、食物アレルギーの血液検査は、特定の食材に対するアレルゲン特異的IgE抗体(I型アレルギー)とリンパ球反応試験(Ⅳ型アレルギー)を測定するものです。
アレルギー検査が「確定診断」にならない理由
・検査で「陽性」と出た食材でも、実際に食べさせても症状が出ない動物は多くいます。これは、免疫システムがその食材を認識(感作)しているだけで、過剰な反応(アレルギー)を起こしていないためです。
・検査結果だけで陽性食材をすべて除去すると、食事の選択肢が極端に狭まり、栄養バランスを崩すリスクがあります。
2.陰性でも症状が出ることがある(IgE以外の反応)
・食物アレルギーの免疫反応は、IgE抗体が関与するものだけではありません。IgEが関与しない免疫反応(非IgE依存性)によってアレルギー症状が出ている場合、Ig E抗体では「陰性」と出てしまいます。
・検査結果が陰性だからといって、「食物アレルギーではない」と断定することはできません。
・リンパ球反応検査まで実施することで、IgE以外の反応を検出できる場合もあります。
アレルギー検査の正しい活用法
獣医学的に、食物アレルギーの血液検査は、あくまで「補助的な検査」として活用されます。
※検査結果は、「その食材に反応する可能性」を示す情報として受け止め、決して「アレルギーの原因」 と決めつけないことが重要です。
食物アレルギー診断に必要な除去食試験とは
現在、獣医学的に最も信頼性が高いとされ、食物アレルギーの確定診断に不可欠なのが除去食試験(Elimination Diet Trial)です。
これは、アレルギーの原因となっている可能性のある食材を食事からすべて取り除き、症状が改善するかどうかを確認する、非常にシンプルかつ強力な診断法です。
除去食試験の4つのステップ
ステップ1:除去食の選定と開始
除去食試験の成功は、「これまで食べたことのないタンパク質」を選ぶことに尽きます。またはアレルギー検査の結果をもとに、食材の選定を行います。
獣医師と相談し、愛犬・愛猫に最適な除去食(療法食)を選びましょう。
ステップ2:徹底した管理(最低8週間)
除去食試験の期間中(通常最低8週間)、飼い主様の徹底した協力が不可欠です。
| 許可されるもの | 厳禁なもの |
| 獣医師が指示した除去食 | おやつ、ガム、サプリメント |
| 獣医師が指示した水 | 人間の食べ物(一口でもNG) |
| 獣医師が指示した投薬 | 味付きの歯磨きペースト、薬を包むチーズなど |
| ノミ・ダニ予防薬 |
「一口だけなら大丈夫だろう」という油断が、試験を失敗に終わらせます。特に、薬を飲ませる際に使うチーズや、ご褒美として与えるおやつなど、除去食以外のものは一切与えてはいけないという強い意志が必要です。
ステップ3:症状の評価
除去食を開始してから、かゆみや皮膚の状態が改善するかを注意深く観察し、評価します。
症状が改善すれば、食物アレルギーの可能性が非常に高くなります。通常、4〜8週間で症状の改善が見られることが多いです。
ステップ4:食物負荷試験(確定診断)
症状が改善したことを確認したら、いよいよ確定診断のための最終ステップ、食物負荷試験を行います。
これは、「症状が改善した状態で、元のフードや特定の食材を再び食べさせてみる」という試験です。
この負荷試験は、愛犬・愛猫に一時的にかゆみを再発させるリスクがあるため、必ず獣医師の指導のもとで行ってください。
除去食試験を成功させるための3つのポイント
除去食試験は、飼い主様にとって根気と努力が必要な診断プロセスです。成功させるために、以下の3つのポイントを心に留めておいてください。
1:家族全員の意識統一
同居のご家族全員が、除去食試験の重要性を理解し、「除去食以外のものは一切与えない」というルールを徹底することが最も重要です。特に小さなお子様がいるご家庭では、誤って食べ物を与えてしまわないよう、細心の注意を払う必要があります。
2:獣医師との連携と記録
試験期間中は、皮膚の状態や行動の変化を細かく記録し、定期的に獣医師に報告しましょう。症状の改善が見られない場合、それは食物アレルギーではない可能性、あるいは除去食の選定が適切でなかった可能性を示唆します。獣医師と相談しながら、次のステップを検討することが大切です。
3:アトピーとの併発を疑う
食物アレルギーを持つ動物の多くは、環境アレルゲンに対するアトピー性皮膚炎を併発していることが少なくありません。
除去食試験で食物アレルギーが確定しても、かゆみが完全にゼロにならない場合は、アトピー性皮膚炎の治療(内服薬、スキンケアなど)を並行して行う必要があります。食物アレルギーの治療は、皮膚病治療の一部であり、すべてではないことを理解しておきましょう。
まとめ
食物アレルギーの血液検査は、飼い主様の不安を和らげ、診断の糸口を見つけるための貴重なヒントを与えてくれます。しかし、その結果に振り回されることなく、除去食試験というプロセスを踏むことが、愛犬・愛猫の本当の原因を突き止め、慢性的な痒みから解放するための唯一の道です。
時間はかかりますが、このプロセスを乗り越えることで、愛する家族に最適な食事と、快適な生活を取り戻すことができます。諦めずに、獣医師と二人三脚で、食物アレルギーを正しく理解して、向き合っていきましょう。
皮膚と耳専門 ヒフカフェ動物病院
獣医師 小林真也
フリースティッチのイベントに参加します!特別セミナーもあります。
2025年12月6日土曜日
場所;吉見運動公園(埼玉県比企郡吉見町)
詳細は:https://www.freestitch.jp/meetup/dogs/retriever
こんにちは!今年のフリースティッチのオフ会に参加することになりました。当日はhiffcafe tamagawaの獣医師、小林が愛犬の健康管理に欠かせない「耳」と「アレルギー」をテーマに特別セミナーを開催します。レトリバーオーナー様が抱えることの多いお悩みを解決し、愛犬との生活をより豊かにするための専門知識と実践的なケア方法を学べる貴重な機会です。この機会に、愛犬の健康を守るための知識をアップデートしましょう。
セミナー1:愛犬の『耳の健康』についてのお話し
(30分 ステージセミナー)
早期発見が愛犬の健康を守る第一歩
愛犬のトラブルの中でも、特に発生頻度が高く、放置すると重症化しやすいのが「耳」のトラブルです。レトリバーのような垂れ耳の犬種は、構造上、トラブルのリスクが高いと言われています。
このステージセミナーでは、愛犬の耳の構造やトラブルが起こるメカニズムといった基礎知識を分かりやすく解説します。耳の赤み、嫌なにおい、頻繁に耳を掻くといったサインは、大きなトラブルの予兆かもしれません。セミナーでは、トラブルの原因や、自宅でできる早期発見のポイントを具体的にご紹介します。
セミナー2:お家で実践!愛犬のお耳ケア
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獣医師と一緒に愛犬の耳をチェック!実践的なケアを学ぶ
実践編として、実際に【オトスコープ】を使い、ご参加犬のお耳の中をチェックします。普段見ることのできない耳の内部を獣医師と一緒に確認し、その子に合ったお手入れ方法や注意点について具体的なアドバイスをもらえる貴重な機会です。
また、自宅でできる耳のケア方法を、初級編から中級編まで実践方式で丁寧に指導。さらに、病院で行う専門的な耳洗浄についても紹介します。
セミナー3:愛犬の『アレルギー』についてのお話し
(30分 ステージセミナー)
意外と身近な「アレルギー」を正しく理解する
レトリバー種は、皮膚疾患や食物アレルギーの傾向を持つ子が多いと言われています。このセミナーでは、「アレルギーって何?」「なぜ起こるの?」といった根本的な疑問に答えます。
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獣医師 小林真也
愛犬が体を掻く、手足を舐める、耳を頻繁に振る。こうした行動は、単なる癖ではなく、アレルギーという病気のサインかもしれません。犬のアレルギーは非常に多い疾患で、痒みによって愛犬の生活の質(QOL)を大きく低下させます。
アレルギーは完治が難しい慢性疾患ですが、適切な知識と対処法で症状をコントロールし、愛犬をサポートすることは可能です。犬のアレルギーの基本から、具体的な診断・治療法、日々の予防策まで解説します。愛犬の「かゆい」を解決し、健やかな毎日を送るための知識を深めていきましょう。
アレルギーとは、特定の物質(アレルゲン)に対して、体の免疫システムが過剰に反応してしまう状態を指します。本来、体を守るための免疫反応が、無害な物質に対してまで「敵」と認識し、攻撃を仕掛けてしまうのです。
犬のアレルギー症状は、皮膚・消化器・呼吸器に出ますが、その中でも皮膚に多く現れます。主な症状としては、かゆみ、皮膚の赤み、脱毛、フケ、そして慢性的な外耳炎などが挙げられます。特に、脇、股、指の間、耳、目の周りといった皮膚の薄い部分に症状が出やすい傾向があります。
アレルギーが起きる背景には、免疫の異常と皮膚のバリア機能の低下が深く関わっています。健康な皮膚は外部からの刺激やアレルゲンの侵入を防ぐ「バリア」として機能していますが、この機能が低下すると、アレルゲンが容易に体内に侵入し、過剰な免疫反応を引き起こしやすくなります。
犬のアレルギー疾患の中でも、特に発生頻度が高いとされるのが「食物アレルギー」「犬アトピー性皮膚炎(環境アレルギー)」「ノミアレルギー性皮膚炎」の三大アレルギーです。それぞれ原因や症状に特徴があります。
3-1. 食物アレルギー
食物アレルギーは、食べ物に含まれるタンパク質に対して免疫が過剰に反応することで起こります。犬の場合、牛肉、鶏肉、乳製品、小麦などが主なアレルゲンとして知られています。
症状は、皮膚の痒みや赤みとして現れることが多いですが、他のアレルギーと異なり、嘔吐や下痢といった消化器症状を伴うことがあるのが特徴です。診断には、アレルゲンとなり得る食材をすべて除去した食事(除去食)を一定期間(2ヶ月間)与え、症状が改善するかどうかを確認する除去食試験が基本となります。
3-2. 犬アトピー性皮膚炎(環境アレルギー)
犬アトピー性皮膚炎は、環境中に存在するアレルゲン(花粉、ハウスダスト、ダニ、カビなど)を吸い込んだり、皮膚から吸収したりすることで発症します。遺伝的な素因が関与していると考えられており、若齢期(生後6ヶ月から3歳頃)に発症することが多い疾患です。
症状は、季節性または通年性の強い痒みが特徴で、特に脇、股、指の間、耳、目の周りといった部位に集中して現れます。環境中のアレルゲンが原因であるため、アレルゲンを完全に排除することは難しく、長期的な管理が必要となります。
3-3. ノミアレルギー性皮膚炎
ノミアレルギー性皮膚炎は、ノミが吸血する際に注入する唾液に含まれる物質に対するアレルギー反応です。ノミの唾液は非常に強いアレルゲンであり、わずか数匹のノミの寄生であっても、激しいアレルギー症状を引き起こすことがあります。
症状は、腰部や尾の付け根に集中した強い痒みと皮膚炎が特徴です。ノミの寄生が見当たらない場合でも、過去の吸血によってアレルゲンが体内に残っている可能性があるため、診断には注意が必要です。
犬のアレルギーは原因が多岐にわたるため、正確な診断と適切な治療法の選択が重要です。
4-1. 診断の流れ
診断は、問診と身体検査から始まります。症状のパターン、食事内容、ノミ予防などを詳細に確認します。
次に、他の皮膚疾患(感染症、寄生虫症など)を除外するための検査を行います。
アレルギーが疑われる場合、以下の検査に進みます。
アレルギー検査はアレルゲンを特定する目的で行います。検査内容は血液で特異的IgE検査やリンパ球反応検査を調べます。食物アレルギーの確定診断にはアレルギー検査に加えて除去食試験が不可欠です。
4-2. 治療の基本方針
犬のアレルギーは完治が難しいですが、適切な治療と管理で症状をコントロールし、QOLを維持することは可能です。治療は、以下の治療方法を組み合わせながら、その子に合った方針を決めていきます。
・アレルゲンの回避
最も重要です。食物アレルギーはアレルゲンを含まない食事へ、アトピーは掃除や除湿で環境アレルゲンを減らします。ノミアレルギーは年間を通じたノミ・ダニ予防薬の投与が必須です。
・薬物療法
痒みや炎症を抑えるため、獣医師の指導のもとで薬物を使用します。
・ステロイド:強力な抗炎症作用がありますが、長期使用には副作用のリスクが伴います。
・抗ヒスタミン薬:軽度のアレルギーに用いられます。
・免疫抑制剤:免疫の過剰な反応を抑えます。
・JAK阻害薬・抗体医薬:痒みの伝達経路を特異的にブロックする新しい治療薬です。
・各種外用薬:局所的な痒みに対して効果的です。
・スキンケア
皮膚のバリア機能をサポートするため、薬用シャンプーや保湿剤を用いたスキンケアが重要です。アレルゲンや細菌を洗い流し、バリア機能の回復を促します。
・特異的免疫療法(減感作療法)
犬アトピー性皮膚炎の治療法の一つで、アレルゲンを少量ずつ投与し、体を慣らす根本的な体質改善を目指す治療法です。時間と費用がかかりますが、長期的な症状改善が期待できます。
・各種サプリメント
オメガ脂肪酸や腸活を摂取することで、皮膚のバリア機能の向上させ、免疫調整作用を助けることができます。
犬のアレルギーは、飼い主にとって根気が必要な病気ですが、現代の獣医療で症状を良好にコントロールすることは可能です。
アレルギーの治療は、決まった一つの治療があるわけではありません。それぞれの愛犬によって必要な治療が変わってきます。その子に合った治療とケアをしていくことが望まれます。獣医師と飼い主さんの二人三脚で進めていくことが大事です。
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皮膚・耳専門・ヒフカフェ 動物病院
hiff cafe tamagawa
〒145-0071
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TEL 03-6459-7555
獣医師 小林真也 Shinya Kobayashi
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