
東京都大田区田園調布1-61-10
TEL.03-6459-7555
| 診療時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 10:00-18:30 | - | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
※月曜はカフェのテイクアウト営業のみ
休診日:月曜 ※日・祝日診療可 ※完全予約制
繰り返す皮膚のトラブル、その原因を考えたことはありますか?
愛犬の体にポツポツとした赤い湿疹やかさぶたを見つけ、動物病院で「膿皮症」と診断された経験を持つ飼い主様は非常に多いでしょう。膿皮症は犬の皮膚病の中で最も一般的なものの一つですが、同時に「一度治ってもすぐに再発する」「抗生剤を飲んでいる間は良いが、止めるとすぐに悪化する」といった悩みが絶えない疾患でもあります。
「うちの子は皮膚が弱い体質だから仕方ない」と諦めてしまう前に、なぜ膿皮症がこれほどまでに治りにくいのかを理解することが重要です。膿皮症が難治化・慢性化する背景には、単なる細菌感染だけではない、複雑な要因が絡み合っています。膿皮症が治らない3つの主要な理由と、それを克服するためのアプローチについて詳しく解説します。

理由①:薬が効かない「薬剤耐性菌」の出現
膿皮症の治療において、最も深刻な問題となっているのが薬剤耐性菌の存在です。膿皮症の主な原因菌は「ブドウ球菌」ですが、長期間にわたって抗生剤を漫然と使用し続けたり、症状が少し良くなったからと自己判断で投薬を中断したりすることで、菌が薬に対して抵抗力を持ってしまうことがあります。
特に近年では、多くの抗生剤が効かなくなった「多剤耐性ブドウ球菌(MRSPなど)」が検出されるケースが増えています。
もし、これまでの治療で効果が感じられない場合は、まず「薬剤感受性検査」を行う必要があります。これは、実際に愛犬の皮膚にいる菌を培養し、どの抗生剤が有効かを科学的に特定する検査です。耐性菌が疑われる場合、安易に強い薬に変えるのではなく、外用薬(塗り薬やシャンプー)を主軸に据えた治療への切り替えが検討されることもあります。
理由②:隠れた「基礎疾患」が見落とされている
膿皮症は、実は「単独で発生する病気」というよりも、何らかの別のトラブルによって皮膚の抵抗力が落ちた結果として起こる「二次的な症状」であることがほとんどです。つまり、火事に例えるなら、膿皮症は「炎」であり、その火をつけた「火種(基礎疾患)」が別に存在するのです。
基礎疾患が放置されたままでは、いくら抗生剤で一時的に菌を抑えても、薬を止めればすぐにまた菌が繁殖してしまいます。
膿皮症を繰り返す場合、それは皮膚だけの問題ではなく、全身の健康状態からのサインかもしれません。
代表的な基礎疾患には、以下のようなものがあります。
1.アレルギー性皮膚炎: 犬アトピー性皮膚炎や食物アレルギーは、皮膚のバリア機能を著しく低下させ、細菌の増殖を許してしまいます。
2.内分泌疾患(ホルモン異常): 甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)などは、皮膚の代謝を悪化させ、免疫力を低下させます。高齢になってから膿皮症を繰り返すようになった場合は、特に注意が必要です。
3.脂漏症: 皮脂の分泌が異常に多くなることで、菌の餌が増え、繁殖しやすい環境が作られます。
これらの基礎疾患を特定し、並行して治療を行わない限り、膿皮症の完治は望めません。血液検査やアレルギー検査を通じて、皮膚の裏側に潜む真の原因を突き止めることが、遠回りに見えて実は最短の解決策となります。
理由③:不適切なスキンケアとバリア機能の低下
「毎日一生懸命シャンプーしているのに治らない」という声をよく耳にします。しかし、その良かれと思っているケアが、逆に膿皮症を悪化させているケースも少なくありません。
健康な皮膚は「バリア機能」によって守られていますが、膿皮症の犬はこのバリアが壊れ、非常にデリケートな状態になっています。ここで、洗浄力の強すぎるシャンプーを使ったり、ゴシゴシと力任せに洗ったりすると、皮膚を保護している必要な脂分まで奪われ、さらにバリアが破壊されてしまいます。
スキンケアの間違い
また、薬用シャンプーの選択も重要です。膿皮症には抗菌成分(クロルヘキシジンなど)が含まれたシャンプーが有効ですが、皮膚の状態(乾燥しているのか、脂っぽいのか)に合わせて選ぶ必要があります。週に何回洗うべきか、何分間成分を浸透させるべきかといった「シャンプー療法」の詳細は、獣医師の指導のもとで行うことが成功の鍵となります。
難治性膿皮症を克服するための3つのステップ
治らない膿皮症に終止符を打つためには、これまでの「対症療法」から「根本治療」へとシフトする必要があります。
ステップ1:徹底した現状把握(検査)
まずは「今、どんな菌がいるのか(感受性検査)」と「なぜ菌が増えるのか(血液・アレルギー検査)」を明確にします。エビデンスに基づいた診断が、無駄な投薬を防ぎます。
ステップ2:多角的なアプローチの実施
内服薬だけに頼るのではなく、外用療法(シャンプー、保湿、塗り薬)、食事療法、そして基礎疾患の治療を同時に行います。最近では、当院では薬浴(消毒液と保湿液の混合した入浴剤を使用)や高濃度炭酸泉温浴などを活用したスキンケアも提案しています。

ステップ3:長期的な管理プランの決定
膿皮症は「治して終わり」ではなく、良い状態を「維持する」ことが目標になります。季節や体調に合わせたスキンケアプランを獣医師と共に作成し、再発の兆候をいち早く察知できる体制を整えましょう。
まとめ:諦める前にアプローチを変えてみよう
「膿皮症が治らない」という状況は、愛犬にとっても飼い主様にとっても非常にストレスなものです。しかし、ここまで述べてきた通り、治らないのには必ず理由があります。
薬剤耐性菌の問題、隠れた基礎疾患、そして日々のスキンケア。これらの一つひとつを丁寧に見直し、適切な対策を講じることで、長年悩まされていた皮膚トラブルが劇的に改善するケースは多々あります。
愛犬が痒みに悩まされることなく、穏やかに過ごせる毎日のために。今の治療に疑問を感じたら、一度立ち止まって、専門的な視点から皮膚の状態を再評価してみてはいかがでしょうか。当院では、皮膚の治療やケアを、その子に合わせたものをご提案しています。お気軽にご相談ください。
皮膚と耳専門 ヒフカフェ動物病院
獣医師 小林真也