大田区、目黒区、世田谷区、川崎市エリアの皮膚と耳専門の動物病院です。カフェトリミングサロンを併設しています

東京都大田区田園調布1-61-10

TEL.03-6459-7555

診療時間
10:00-18:30 -

※月曜はカフェのテイクアウト営業のみ
休診日:月曜  ※日・祝日診療可 ※完全予約制

皮膚科症例

マラセチア皮膚炎

皆さんこんにちは。

梅雨です!
梅雨はワンちゃん達の皮膚にとってはあまり良い季節ではありませんね!
以前に書いた膿皮症も増えますし、お家のカビに反応してしまうアトピー性皮膚炎の子にも嫌な季節ですよね。。

アトピー性皮膚炎や食事アレルギーの子や、体質的に脂漏症(脂っぽくなりやすい)の皮膚を持っている子たちにはもう一つ、この季節に悪化をもたらす原因菌があります。

それが今日ご紹介する” マラセチア ” です。

( マラセチアって何? )

マラセチアは酵母菌です。すなわちイーストです。

えっ?酵母?イースト?それってパンとか作るやつじゃないの?!

と言われるのですが、酵母菌には何百という種類があって、そのうちパンを作る種類、お酒を作る種類など色々に分かれるのです。

そして”マラセチア”は、犬や人の皮膚の上で増えて、時々皮膚炎を起こす種類というわけです。

人の皮膚の上でと書きましたが、人には人のマラセチアが、犬には犬のマラセチアという風に動物によって相性がありますから、お家のワンちゃんがマラセチア皮膚炎の診断をされても飼い主様に移る心配はほとんどありません。

”マラセチア”は犬の皮膚の常在菌です。常在菌というのは多くの動物が生まれた時から共存している菌で、普段は病原性を持たないものを言います。

ところがマラセチアが何らかの原因で通常以上に増殖すると、しばしば皮膚に炎症を引き起こします。
特にこの酵母菌は脂分を好むので、皮膚のコンディションが脂性に傾く脂漏症の時に急激に増殖する傾向があります。

(どんな検査をするの?)

マラセチア皮膚炎が疑われる場合、病変部の皮膚にセロハンテープやスライドグラスを押し当てて染色し、顕微鏡で観察します。細菌よりも大きいボーリングのピンのような特徴的な酵母菌がたくさん見つかればマラセチア皮膚炎と診断できます。

 

(どんな症状?)

マラセチア皮膚炎は、内股や、指の間、腋の下、後ろ肢の曲がる部分、口唇周囲など、皮膚と皮膚が擦れる部位や皺になる部位、脂が貯まる部位に発生しやすいです。皮膚が脂っぽくフケが多くなり、赤くなります。慢性化すると皮膚は分厚くなり、皺が多くなり、色素沈着で黒っぽくなります。
痒みは比較的強いです。

(どうしてなるの?)

生まれつき脂漏性の皮膚をもつ犬種(ウェスティ、シーズーや、フレンチ・ブルドッグ、パグ、ダックスフンドなど)では、体質的にマラセチア皮膚炎になりやすい傾向があります。また、アトピー性皮膚炎や食事アレルギーなどが背景にあり、皮膚のコンディションが変化して脂漏が生じると、マラセチア皮膚炎を発症しやすくなります。脂質の代謝異常(コレステロールや中性脂肪の処理がうまくいかない)の病気などでも脂漏性皮膚炎になります。

(どんな治療をするの?)

酵母菌はカビに近い真菌の仲間なので、真菌を殺す薬(抗真菌薬)を使って治します。
重症の場合は、抗真菌薬を2週間くらい内服します。その後1週間に2回などの投薬に切り替える場合もありますし、かなり良化していれば中止します。
軽度から中程度の場合は、抗真菌薬を含んだシャンプーなどで薬浴をします。ゆっくり優しく時間をかけてシャンプーして、その後にはしっかり保湿をします。

hiff cafeのトリミング室では、診察と合わせてシャンプー療法も実施しています。お家でのシャンプーが大変な子は遠慮なく頼ってください!

文責:水曜日・木曜日午前中担当獣医師:山本真紀子

ステロイド皮膚症

皆さまこんにちは。

緊急事態宣言も明け、社会が動き始めましたが、どのようにお過ごしですか?

hiff cafe tamagawaはコロナ対策を様々行いながら、病院の方は予約診療を継続して行ってます。
スタッフ皆元気でお出迎えしてます🐶

さて、今日はhiff cafeならではの、少し変わった皮膚病をご紹介したいと思います。

それは ”ステロイド皮膚症” というものです。

”ステロイド”というと皆さまどのような印象をお持ちでしょうか?
やはりあまり使いたくないなとか、怖いんじゃないか、とかありますか?

いわゆるステロイドとは体にある副腎という内臓で作られる副腎皮質ホルモンを合成して作った薬剤で、強い抗炎症作用、抗アレルギー作用を持ち、皮膚病の他様々な病気に使われているお薬です。

内服(飲み薬)で使う場合は
・糖尿病を起こしやすくなる
・尿量が増える
・太りやすくなる(食欲も亢進する)
などの副作用もあり注意して服用する必要があります。

外用(塗り薬)で使用する場合は上記の副作用はほとんど見られず、効かせたい部位にのみ効果的に働くため、当院も含め皮膚科領域では多く使用することがあります

一部で噂される「黒くなる」「癖になる」「一生全身に影響が残る」などは、誤解や使い方の悪さによるもので、通院しながら他の治療法と組み合わせて上手に用いれば非常に効果的に心配なく使用することができます。

ところが!!

「皮膚病ですか?じゃあ、これね。」

と処方されたものを漫然と多量に使い続けた場合には、
今日ご紹介する

” ステロイド皮膚症 ”

になってしまうことがあるかもしれません。

次の写真は他院で数年にわたり、1日に何回もステロイドの塗り薬を塗っていた症例です。

皮膚は薄くなり血管が透けて見えます。赤味が引かず、薄いフケが多くみられます。

皮膚は傷つきやすく、簡単な傷が治りにくいといった症状が認められます。

塗り薬を中止し、もっと優しい治療法に変更して数カ月で完治しました。

最近、ステロイドを塗って何時間か付け置きして洗い流すという治療法が一部で流行っていますが、軽い皮膚病にこの強いやり方を繰り返した場合も同じような症状になってしまうことがあります。何度か同じ治療をして上手くいかない場合は、違う原因や、違う治療法を探してみるといった工夫も大事ですね。

hiff cafeでは初期にはステロイドも使用しますが、通院していただきながら他の治療法と組み合わせ、最小用量の処方を探るお手伝いをしています。

文責;水曜日、木曜日午前中担当 山本 真紀子

ニキビダニ症

皆さん。人の ”顔ダニ” って聞いたことありますか?

何年か前 ”汚ギャル” の話でちょっと話題になりました!

人の顔のニキビなどの原因や悪化因子になるダニで、

正式名称を ”ニキビダニ” と言います。

詳しくは下記(Wikipedia)

https://ja.wikipedia.org/wiki/ニキビダニ

実はこのニキビダニは色んな哺乳類に寄生して共存していて、人には人のニキビダニ、

犬には犬のニキビダニ、猫には猫のニキビダニが寄生することが知られています。

( 犬のニキビダニ写真 )

これは毛穴に住むダニの1種なのですが、普通はごく少量の寄生で穏やかに共存していて、ほとんど症状らしい症状を示しません。

ところが、

1.幼なくてまだ皮膚の免疫力が高くない

2.免疫の病気や、腫瘍、アレルギーなどで免疫抑制剤を飲んでいる

3.免疫が弱くなる病気(内分泌・・ホルモン系の病気など)に罹っている

4.体調がとても悪く、免疫力が低下した

5.生まれつきの体質

などの理由で、

ニキビダニ  ⇔  免疫

のバランスが崩れると、皮膚に発疹や痒みを引き起こします。

こうしてニキビダニによって引き起こされる皮膚病を

” ニキビダニ症 ” と言います。

 

【どんな症状?】

ニキビダニ症の皮膚の発疹は非常に多彩で重症度も様々です。

( 色んなニキビダニ症の写真です )

原レオ治療前腹部

① 治療前

原レオ治療後

① 治療後です。白くなってフワフワに毛が生えました!

高齢犬ニキビダニ症+蜂窩織炎

② 治療前

② 治療後です!

 

子犬のニキビダニ症

これらが、みんな同じ皮膚病だなんて信じられますか?

①の子は何年も治らなかったそうです!毛が全身、全体的に薄くなっていました。毛はすぐ抜けてしまうし、いつも痒かったのです。②の子は細菌感染も併発していて、元気までない様子でした。③の子は子犬のニキビダニ症です。他の病院で抗生物質の治療を受けて、痒いし全然治らないということで来院しました。

みんなすっかり良くなってくれました(^^)

 

【どんな検査をするの?】

時々 ” 見るだけで分からないんですか? ” と言われることがあります。。

ごめんなさい。上のような状況で。。

見るだけで診断できない場合も多いんです💦

診断には最近のストレスや使用中の薬、全身状態についての丁寧な問診に加えて、皮膚の検査が必要です。背景に他の病気があると思われる場合は血液検査💉などをお奨めする場合もあります。

 

【治療は?】

ニキビダニの治療は色々ありますが、最近ではいくつかのノミ・マダニ予防薬にニキビダニの治療効果があることが分かってきていますので、それらと違う薬をノミ・マダニ予防に使っている、あるいは元々ノミ・マダニ予防をしていない子には、

ニキビダニ治療効果のあるノミ・マダニ予防薬の使用をお奨めします。

他には薬浴の併用、飲み薬などの方法があります。

 

【治療期間など】

早い子では1か月くらいである程度の効果がみられますが、完治には数カ月かかることが多いです。他の病気で免疫抑制剤が止められないなどのケースでは生涯にわたる治療が必要になってしまうこともありますし、免疫が弱くなる病気が背景にある場合は、基礎になる病気の治療が必要です。

 

 

!ワンポイントアドバイス!

 ニキビダニ症は時に見過ごされやすい皮膚病です。

見た目だけで ” アレルギー ” とか ” アトピー ” と診断されている子が、” 実はニキビダニ症だった!” なんてことは珍しいことではありません。

アトピー性皮膚炎の治療でステロイドやアポキルなどのお薬を長く飲んでいる子で、” 最近効果がなくなってきた ” なんて感じられる時は、

ニキビダニ症が併発していないか皮膚検査の再検査をお奨めします。

文責;木曜日午前中担当獣医師:山本

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