
東京都大田区田園調布1-61-10
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「洗ってもすぐにベタベタ……」
シャンプーしたばかりなのに、翌日にはもう毛がベタついている。抱っこすると手に脂がつくような感触があり、独特の脂臭いニオイが部屋に漂う……。そんな「治らないベタつき」に頭を悩ませている飼い主様は非常に多いです。
「うちの子は脂性だから仕方ない」「もっと頻繁に洗わなきゃ」と、必死にシャンプーを繰り返してはいませんか?実は、その「良かれと思ったケア」が、かえってベタつきを悪化させているケースも少なくありません。犬の皮膚のベタつきは、単なる汚れではなく、皮膚のバリア機能が崩れたサインである「脂漏症(しろうしょう)」という状態かもしれません。
本記事では、なぜ愛犬の皮膚がベタつくのか、その根本的な原因を整理し、最新の知見に基づいた「ベタつきを根本から見直すための対策」を詳しく解説します。
理由①:ベタつきの正体「脂漏症」と「マラセチア」の悪循環
犬の皮膚には、外部の刺激から身を守るために適度な皮脂が必要です。しかし、何らかの理由でこの皮脂が過剰に分泌される状態を「脂漏症」と呼びます。脂漏症には、遺伝的な体質による「原発性脂漏症」と、他の病気が原因で起こる「二次性脂漏症」があります。
脂漏症になりやすい犬種
・アメリカン・コッカー・スパニエル:遺伝的に皮脂のターンオーバーが非常に早く、重度の脂漏症になりやすい。
・シー・ズー:皮脂が多く、マラセチア皮膚炎を併発しやすい代表的な犬種。
・フレンチ・ブルドッグ:皮膚のひだに脂が溜まりやすく、炎症を起こしやすい。
・ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア:アレルギー体質と重なり、皮膚が厚くベタつきやすい。
このベタつきをさらに悪化させるのが、皮膚に常在しているカビの一種「マラセチア」です。マラセチアは皮脂をエサにして増殖するため、脂漏症の犬の皮膚はマラセチアにとって最高の繁殖場となります。増えすぎたマラセチアは皮膚に強い炎症を引き起こし、独特の「発酵したようなニオイ」や激しい痒みの原因となります。放置すると皮膚が黒ずんで厚くなるなど、取り返しのつかない状態になってしまうこともあります。
理由②:良かれと思った「洗いすぎ」が逆効果?
「ベタつくから毎日洗う」というケアは、一見理にかなっているように思えますが、実は非常に危険な落とし穴があります。
皮膚の表面には、水分を保持し外部刺激を防ぐ「バリア機能」が備わっています。洗浄力の強いシャンプーで頻繁に洗いすぎると、必要な皮脂まで根こそぎ奪われ、皮膚は「乾燥」という危機に直面します。すると体は、乾燥した皮膚を守ろうとして、さらに大量の皮脂を分泌するよう指令を出します。これが「代償性皮脂分泌」と呼ばれる現象です。
「洗えば洗うほど、体は脂を出そうとする」という皮肉な悪循環に陥っている飼い主様は、実は非常に多いのです。
正しいスキンケアのポイントは、以下の3点です。
1.クレンジングオイルの活用: 頑固な脂汚れは、シャンプーだけで落とそうとせず、犬用のクレンジングオイルで浮かせてから洗うのが効果的です。「脂を脂で落とす」ことで、皮膚への負担を最小限に抑えられます。
2.適切なシャンプー頻度: 症状にもよりますが、基本的には週に1〜2回程度が目安です。それ以上の頻度で洗いたい場合は、洗浄成分の入っていない「かけ湯」や、保湿剤のみの使用に留めるべきです。
3.ベタつく肌こそ「保湿」: ベタついているから保湿は不要、と思われがちですが、実はその逆です。皮膚が十分に潤っていれば、体は過剰に皮脂を出す必要がなくなります。シャンプー後は必ず、ベタつかないタイプの保湿剤でバリア機能を補ってあげましょう。
理由③:内側からの要因「食事」と「腸内環境」
皮膚は「内臓の鏡」とも言われます。外側からのケアだけで改善しない場合、体の内側に原因があるかもしれません。
まず見直すべきは「食事の質」です。安価なフードに含まれる酸化した脂質や、過剰な炭水化物は、皮脂の質を悪化させ、ベタつきやニオイを強くする原因になります。皮膚の健康を支える「オメガ3脂肪酸(魚油など)」を積極的に取り入れることで、炎症を抑え、サラサラとした良質な皮脂へと導くことができます。
さらに、最新の獣医療で注目されているのが「腸内環境(腸内フローラ)」と皮膚の関係です。腸内の善玉菌と悪玉菌のバランスが崩れると、体内の免疫システムが乱れ、皮膚のバリア機能が低下したり、過剰な炎症反応が起きやすくなったりすることが分かってきました。
「腸活」としてプロバイオティクス(乳酸菌や納豆菌など)のサプリメントを導入したところ、長年悩んでいた皮膚のベタつきやニオイが劇的に改善したという症例も増えています。皮膚のトラブルは、実は「お腹の中の乱れ」からのSOSかもしれません。
諦める前に試したい「ベタつき解消の3ステップ」
「もう一生、このベタベタと付き合っていくしかない」と諦める前に、以下のステップを試してみてください。
ステップ1:隠れた「基礎疾患」をチェックする
甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)などのホルモン異常があると、皮膚の代謝が乱れてベタつきが出ることがあります。まずは血液検査で、内臓の病気が隠れていないかを確認しましょう。
ステップ2:脱脂と保湿のバランスを見つける
その子の皮膚の状態に合わせたシャンプー剤の選択(脱脂力の強さ)と、その後の徹底した保湿。このバランスをプロ(獣医師やトリマー)と一緒に見直すだけで、皮膚の状態は見違えるほど変わります。
ステップ3:体質改善のための「腸活」と「食事療法」
良質なタンパク質と脂質を含んだ食事への切り替え、そして腸内環境を整えるサプリメントの活用。内側から「脂の出にくい体」を作っていくことで、シャンプーの頻度を減らしてもベタつかない状態を目指せます。
まとめ:ベタつきゼロではなく「健康な脂」を目指そう
犬にとって皮脂は、乾燥や細菌から身を守るための大切な「天然のバリア」です。ベタつきを完全にゼロにすること(=カサカサの肌にすること)がゴールではありません。
大切なのは、皮脂が過剰に出すぎず、マラセチアなどの菌と共生しながら、愛犬が痒みやニオイに悩まされずに過ごせる「健康なバランス」を取り戻すことです。
「治らない」と一人で悩まず、ぜひ専門的な皮膚科診療を頼ってください。その子に合ったオーダーメイドのケアを見つけることで、愛犬との「ベタつかない、爽やかな毎日を取り戻しましょう。
皮膚と耳専門 ヒフカフェ動物病院
獣医師 小林真也
「年だから仕方ない」と諦めていませんか?
愛犬を撫でているとき、指先にポツンとした小さな膨らみを感じたことはありませんか?「あれ、こんなところにイボがあったかな?」と思いながらも、本人が痛がっている様子もなく、食欲も元気もある。そんなとき、多くの飼い主様は「年を取ったからイボくらいできるよね」「これくらいなら放っておいても大丈夫かな」と考えてしまいがちです。
しかし、その「治らないイボ」には、実は見逃してはいけないサインが隠れていることがあります。また、良性のイボであっても、場所によっては愛犬の生活の質(QOL)を著しく下げてしまうこともあるのです。
犬のイボの種類や放置するリスク、そして当院が新しく導入した、体に優しい最新の治療法「凍結治療(クライオサージェリー)」について詳しく解説します。「麻酔をかけるほどではないけれど、このイボを何とかしてあげたい」と悩んでいる飼い主様にとって、新しい解決の糸口になれば幸いです。
そのイボ、本当に放置して大丈夫?
犬の皮膚にできる「できもの」には、大きく分けて良性のものと悪性のものがあります。見た目だけで判断するのは非常に危険ですが、まずは一般的な特徴を知っておくことが大切です。
・良性のイボ(乳頭腫、皮脂腺腫、表皮嚢胞など)
成長が緩やかで、周囲の組織に浸潤しない。カリフラワー状や、皮膚から飛び出したような形が多い。
・悪性の腫瘍(肥満細胞腫、メラノーマ、扁平上皮癌など)
成長が早く、形が不規則。色が黒っぽかったり、赤く腫れたり、表面が崩れて出血(自壊)したりすることがある。
良性のイボであっても、以下のようなケースでは治療を検討すべきです。
1.場所が悪い: まぶたにできて眼球を刺激している、足の裏にあって歩くたびに痛む、口の周りにあって食事の邪魔になるなど。
2.気にして舐める・掻く: 犬が気にして触り続けることで、炎症が起きたり細菌感染を引き起こしたりします。
3.どんどん大きくなる: 良性であっても、巨大化すると皮膚が突っ張って痛みが出たり、手術の際の切除範囲が広くなってしまいます。
特に、「急に大きくなった」「色が変わった」「表面から血や汁が出ている」といった変化が見られた場合は、一刻も早い受診が必要です。
従来の治療法の悩みどころ:全身麻酔の必要性
これまでのイボの治療といえば、主に「外科手術による切除」か「経過観察」の二択でした。しかし、ここには飼い主様にとって大きな葛藤がありました。
外科手術は確実な方法ですが、多くの場合、全身麻酔が必要です。特にイボができやすい高齢犬や、心臓などに持病がある子にとって、全身麻酔は決して小さくないリスクを伴います。「イボ一つ取るために、命に関わるかもしれない麻酔をかけるのは……」と躊躇されるのは、飼い主様として当然の心理です。
一方で、経過観察を選んだ結果、数ヶ月後にイボが巨大化してしまい、「あのとき取っておけば、もっと小さな手術で済んだのに」と後悔されるケースも少なくありません。この「麻酔のリスク」と「放置のリスク」のジレンマを解消するために、当院では「凍結治療」を導入しました。
新導入!「凍結治療(クライオサージェリー)」とは?

凍結治療(クライオサージェリー)とは、超低温の液体(液体窒素や亜酸化窒素など)を用いて、ターゲットとなるイボを瞬間的に凍結させ、細胞を破壊して自然に脱落させる治療法です。人間でもイボ取りの際によく行われる治療ですが、動物医療においてもその有用性が高く評価されています。
凍結治療のメリット
当院がこの治療を導入した最大の理由は、何よりも「負担が極めて少ない」からです。
どのようなイボに適しているのか?
凍結治療は、特に以下のようなケースで威力を発揮します。
凍結治療の流れ:診察からポロリと取れるまで
実際の治療は、以下のようなステップで進みます。
1.診察と細胞診: そのイボが凍結治療に適しているかどうかを判断します。必要に応じて細い針で細胞を採取し、悪性の可能性がないかを確認します。
2.凍結処置: 専用の機器(クライオプローブなど)を用いて、イボを数回凍結・融解させます。犬は少し冷たさを感じる程度で、多くの子が落ち着いて受けてくれます。
3.経過観察: 処置直後は少し赤みが出ることがありますが、数日経つとイボが黒く硬いかさぶたのようになります。
4.自然脱落: 処置から1〜3週間ほどで、イボがポロリと自然に剥がれ落ちます。下からは新しい綺麗な皮膚が再生してきます。
※腫瘍の大きさや種類によっては、1回で取りきれず、数回の処置が必要になる場合もあります。また、深部にある大きな腫瘍や、広範囲に広がる悪性腫瘍などは、従来通り外科手術が推奨されることもあります。
まとめ:小さなイボのうちに、優しく治そう
「イボくらいで病院に行くのは大げさかな……」と遠慮される飼い主様もいらっしゃいますが、決してそんなことはありません。小さなイボのうちに対処することは、愛犬の将来の負担を減らすことに直結します。
凍結治療という選択肢が増えたことで、私たちは「麻酔のリスク」を恐れることなく、愛犬の皮膚の悩みに応えることができるようになりました。もし、愛犬の体に気になる「治らないイボ」があるのなら、ぜひ一度当院にご相談ください。
「ほっといていいイボ」なのか、それとも「優しく取ってあげるべきイボ」なのか。一緒に確認して、愛犬がより快適に過ごせる方法を見つけていきましょう。
皮膚・耳専門 ヒフカフェ動物病院
獣医師 小林
愛犬の背中の毛が薄くなってきた、お腹の地肌が透けて見えるようになった、あるいはポメラニアンのようなフワフワの毛がパサパサになり、ついには生えてこなくなった……。そんな愛犬の姿を見て、「何か大きな病気なのではないか」「もう元の姿には戻れないのか」と、不安を感じている飼い主様は少なくありません。
脱毛症は、膿皮症や外耳炎のように激しい痒みや痛みを伴うことは少ないかもしれません。しかし、見た目の変化が非常に大きいため、散歩中に人目が気になったり、自分のお手入れが足りないのではないかと自責の念に駆られたりするなど、飼い主様の精神的な負担が非常に重い疾患でもあります。
「いろいろな治療を試したけれど、一向に毛が生えてこない」と諦めてしまう前に、一度立ち止まって考えてみましょう。脱毛が治らない理由を整理し、今からでもできるアプローチについて詳しく解説します。
理由①:毛周期停止を起こす「内分泌疾患」
犬の毛は、常に伸び続けているわけではありません。「成長期」に伸び、「退行期」を経て「休止期」に入り、やがて抜けて新しい毛に代わるというサイクル(毛周期)を繰り返しています。このサイクルをコントロールしているのが、体内のホルモンです。
もし、愛犬が「痒がっていないのに左右対称に毛が抜ける」「皮膚が黒ずんできた」「元気がなく、太りやすくなった」といった症状を伴っている場合、内分泌疾患(ホルモン疾患)が原因である可能性が高いです。
甲状腺機能低下症;
代謝を司る甲状腺ホルモンが不足し、毛のサイクルが「休止期」で止まってしまう。尾の毛が抜ける(ラットテイル)こともある。
副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群);
ステロイドホルモンが過剰になり、皮膚が薄くなって脱毛する。多飲多尿や腹部膨満を伴うことが多い。
性ホルモン失調;
未去勢や未避妊による性ホルモンの影響や、精巣・卵巣の腫瘍によって脱毛が起こる。
これらの疾患は、血液検査で診断が可能です。重要なのは、これらは「皮膚の病気」ではなく「全身の病気」であるという点です。適切な投薬によってホルモンバランスを整えることで、止まっていた毛のサイクルが再び動き出し、数ヶ月後には見違えるほどフサフサに戻るケースも珍しくありません。
理由②:「アロペシアX(脱毛症X)」
ポメラニアン、トイプードルなどの犬種で、ホルモン検査をしても異常がないのに、首から胴体にかけて広範囲に毛が抜けてしまうことがあります。これが、原因がいまだ解明されていない「アロペシアX(脱毛症X)」です。
「X」という名前が示す通り、かつては「偽クッシング症候群」や「成長ホルモン反応性脱毛症」など様々な名前で呼ばれてきました。この疾患の最大の特徴は、「健康状態には全く問題がないが、毛だけが生えない」という点です。
アロペシアXは、命に関わる病気ではありません。しかし、見た目の変化が飼い主様にとって大きなストレスとなるため、治療を希望される方が多い疾患です。
アロペシアXの治療には、決定的な特効薬はありませんが、以下のような多角的なアプローチが試みられています。
理由③:免疫疾患や栄養不足が原因かも
内分泌疾患でもアロペシアXでもない場合、自分の免疫細胞が誤って毛包(毛の根元)を攻撃してしまう「免疫介在性脱毛症」の可能性があります。また、遺伝的に特定の部位の毛が薄くなる「パターン脱毛症」なども存在します。
さらに、意外と見落とされがちなのが「栄養不足」と「腸内環境」です。毛の主成分はタンパク質(ケラチン)です。良質なタンパク質が不足していたり、腸の状態が悪くて栄養を十分に吸収できていなかったりすると、体は命に関わる臓器へ優先的に栄養を送り、命に関わらない「毛」への供給を後回しにしてしまいます。
「高いフードをあげているから大丈夫」と思っていても、その子の体質に合っていなければ意味がありません。皮膚のバリア機能を高める必須脂肪酸や、毛の合成を助けるビタミン・ミネラルが不足していないか、今一度食事内容を見直す価値はあります。
諦める前に試したい「発毛への3つのステップ」
「もう何をやってもダメだった」と感じている飼い主様へ、改めて提案したいステップがあります。
ステップ1:徹底した「除外診断」をやり直す
脱毛の原因は多岐にわたります。まずは、ニキビダニや真菌(カビ)などの感染症がないか、そしてホルモン検査の結果に漏れがないか、皮膚科に強い獣医師による再評価を受けることが第一歩です。
ステップ2:内側からの「土壌改良」
毛が生えるための「土壌」である体を整えます。腸内環境を整えるプロバイオティクスの摂取や、皮膚の代謝を助けるサプリメントの導入、そしてその子の消化能力に合った食事への変更を検討します。
ステップ3:外側からの「刺激」
止まっている毛根に「毛を作れ」という信号を送ります。保湿を徹底して皮膚の乾燥を防ぎ、血行を促進するマッサージや、近赤外線療法や炭酸泉温浴などを組み合わせることで、眠っていた毛根が目を覚ますことがあります。
まとめ:毛が生えることだけがゴールではない
脱毛症の治療は、一朝一夕にはいきません。毛のサイクルが変わるまでには最低でも3ヶ月、長ければ1年以上の根気強い取り組みが必要です。
そして、最後に一つお伝えしたいことがあります。それは、「たとえ毛が生え揃わなかったとしても、愛犬の価値は少しも変わらない」ということです。毛が薄くても、愛犬が痒みや痛みなく、毎日を楽しく過ごせているのであれば、それは一つの「成功」と言えるのではないでしょうか。
「治らない」と決めつける前に、今の愛犬の状態を正しく理解し、できる限りのケアをしてあげること。その愛情こそが、愛犬にとって最も必要な栄養素かもしれません。諦める前に、もう一度だけ、新しい選択肢を探してみましょう。
当院では脱毛症の治療に力を入れています。お気軽にご相談ください。


皮膚科・耳科専門 ヒフカフェ動物病院
獣医師 小林真也