
東京都大田区田園調布1-61-10
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愛犬が体を掻く、手足を舐める、耳を頻繁に振る。こうした行動は、単なる癖ではなく、アレルギーという病気のサインかもしれません。犬のアレルギーは非常に多い疾患で、痒みによって愛犬の生活の質(QOL)を大きく低下させます。
アレルギーは完治が難しい慢性疾患ですが、適切な知識と対処法で症状をコントロールし、愛犬をサポートすることは可能です。犬のアレルギーの基本から、具体的な診断・治療法、日々の予防策まで解説します。愛犬の「かゆい」を解決し、健やかな毎日を送るための知識を深めていきましょう。
アレルギーとは、特定の物質(アレルゲン)に対して、体の免疫システムが過剰に反応してしまう状態を指します。本来、体を守るための免疫反応が、無害な物質に対してまで「敵」と認識し、攻撃を仕掛けてしまうのです。
犬のアレルギー症状は、皮膚・消化器・呼吸器に出ますが、その中でも皮膚に多く現れます。主な症状としては、かゆみ、皮膚の赤み、脱毛、フケ、そして慢性的な外耳炎などが挙げられます。特に、脇、股、指の間、耳、目の周りといった皮膚の薄い部分に症状が出やすい傾向があります。
アレルギーが起きる背景には、免疫の異常と皮膚のバリア機能の低下が深く関わっています。健康な皮膚は外部からの刺激やアレルゲンの侵入を防ぐ「バリア」として機能していますが、この機能が低下すると、アレルゲンが容易に体内に侵入し、過剰な免疫反応を引き起こしやすくなります。
犬のアレルギー疾患の中でも、特に発生頻度が高いとされるのが「食物アレルギー」「犬アトピー性皮膚炎(環境アレルギー)」「ノミアレルギー性皮膚炎」の三大アレルギーです。それぞれ原因や症状に特徴があります。
3-1. 食物アレルギー
食物アレルギーは、食べ物に含まれるタンパク質に対して免疫が過剰に反応することで起こります。犬の場合、牛肉、鶏肉、乳製品、小麦などが主なアレルゲンとして知られています。
症状は、皮膚の痒みや赤みとして現れることが多いですが、他のアレルギーと異なり、嘔吐や下痢といった消化器症状を伴うことがあるのが特徴です。診断には、アレルゲンとなり得る食材をすべて除去した食事(除去食)を一定期間(2ヶ月間)与え、症状が改善するかどうかを確認する除去食試験が基本となります。
3-2. 犬アトピー性皮膚炎(環境アレルギー)
犬アトピー性皮膚炎は、環境中に存在するアレルゲン(花粉、ハウスダスト、ダニ、カビなど)を吸い込んだり、皮膚から吸収したりすることで発症します。遺伝的な素因が関与していると考えられており、若齢期(生後6ヶ月から3歳頃)に発症することが多い疾患です。
症状は、季節性または通年性の強い痒みが特徴で、特に脇、股、指の間、耳、目の周りといった部位に集中して現れます。環境中のアレルゲンが原因であるため、アレルゲンを完全に排除することは難しく、長期的な管理が必要となります。
3-3. ノミアレルギー性皮膚炎
ノミアレルギー性皮膚炎は、ノミが吸血する際に注入する唾液に含まれる物質に対するアレルギー反応です。ノミの唾液は非常に強いアレルゲンであり、わずか数匹のノミの寄生であっても、激しいアレルギー症状を引き起こすことがあります。
症状は、腰部や尾の付け根に集中した強い痒みと皮膚炎が特徴です。ノミの寄生が見当たらない場合でも、過去の吸血によってアレルゲンが体内に残っている可能性があるため、診断には注意が必要です。
犬のアレルギーは原因が多岐にわたるため、正確な診断と適切な治療法の選択が重要です。
4-1. 診断の流れ
診断は、問診と身体検査から始まります。症状のパターン、食事内容、ノミ予防などを詳細に確認します。
次に、他の皮膚疾患(感染症、寄生虫症など)を除外するための検査を行います。
アレルギーが疑われる場合、以下の検査に進みます。
アレルギー検査はアレルゲンを特定する目的で行います。検査内容は血液で特異的IgE検査やリンパ球反応検査を調べます。食物アレルギーの確定診断にはアレルギー検査に加えて除去食試験が不可欠です。
4-2. 治療の基本方針
犬のアレルギーは完治が難しいですが、適切な治療と管理で症状をコントロールし、QOLを維持することは可能です。治療は、以下の治療方法を組み合わせながら、その子に合った方針を決めていきます。
・アレルゲンの回避
最も重要です。食物アレルギーはアレルゲンを含まない食事へ、アトピーは掃除や除湿で環境アレルゲンを減らします。ノミアレルギーは年間を通じたノミ・ダニ予防薬の投与が必須です。
・薬物療法
痒みや炎症を抑えるため、獣医師の指導のもとで薬物を使用します。
・ステロイド:強力な抗炎症作用がありますが、長期使用には副作用のリスクが伴います。
・抗ヒスタミン薬:軽度のアレルギーに用いられます。
・免疫抑制剤:免疫の過剰な反応を抑えます。
・JAK阻害薬・抗体医薬:痒みの伝達経路を特異的にブロックする新しい治療薬です。
・各種外用薬:局所的な痒みに対して効果的です。
・スキンケア
皮膚のバリア機能をサポートするため、薬用シャンプーや保湿剤を用いたスキンケアが重要です。アレルゲンや細菌を洗い流し、バリア機能の回復を促します。
・特異的免疫療法(減感作療法)
犬アトピー性皮膚炎の治療法の一つで、アレルゲンを少量ずつ投与し、体を慣らす根本的な体質改善を目指す治療法です。時間と費用がかかりますが、長期的な症状改善が期待できます。
・各種サプリメント
オメガ脂肪酸や腸活を摂取することで、皮膚のバリア機能の向上させ、免疫調整作用を助けることができます。
犬のアレルギーは、飼い主にとって根気が必要な病気ですが、現代の獣医療で症状を良好にコントロールすることは可能です。
アレルギーの治療は、決まった一つの治療があるわけではありません。それぞれの愛犬によって必要な治療が変わってきます。その子に合った治療とケアをしていくことが望まれます。獣医師と飼い主さんの二人三脚で進めていくことが大事です。
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皮膚・耳専門・ヒフカフェ 動物病院
hiff cafe tamagawa
〒145-0071
東京都大田区田園調布1-61-10
TEL 03-6459-7555
獣医師 小林真也 Shinya Kobayashi
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犬の皮膚は、人間と比べて非常に薄くデリケートです。角質層は1/3~1/5の薄さといわれています。皮膚が持つバリア機能は、外部刺激や病原菌から体を守る大切な役割を担っています。しかし、皮膚が乾燥するとこのバリア機能が低下し、かゆみやフケ、ひどい場合は皮膚炎の悪化につながってしまいます。
特に、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患を持つ犬にとって、乾燥は大敵です。日々の適切な保湿ケアは、皮膚トラブルを予防し、愛犬が快適に過ごすための健康管理の基本になるでしょう。
犬の皮膚が乾燥する原因は様々ですが、主に以下に分けられます。
環境と生活習慣による乾燥
体質や病気による乾燥
乾燥肌が続く場合は、単なる環境の問題ではなく、病気が隠れている可能性もあるため、一度獣医師に相談することが大切です。
犬の皮膚を健康に保つための保湿ケアは、「日常のケア」と「シャンプー時のケア」、そして「環境の整備」の3つの柱で成り立っています。
(1) 日常の保湿ケア:保湿剤を上手に活用
最も手軽で効果的なのが、犬用の保湿剤を使ったケアです。保湿剤にはスプレー、ローション、クリームなど様々なタイプがあります。部位によって使い分けることをオススメします!
保湿は継続することが何よりも重要です。愛犬が嫌がらないテクスチャーや香りのものを選び、日課にしましょう。
(2) シャンプー・入浴で潤いを守る
シャンプーは汚れを落としますが、同時に皮膚のバリア機能を一時的に低下させます。
(3) 生活環境を整える
皮膚の乾燥は、外部環境に大きく左右されます。
愛犬に合った保湿剤を選ぶために、種類と主要な成分を知っておきましょう。
保湿剤の種類
| 種類 | 特徴 | おすすめの用途 |
| スプレー | 手軽で広範囲に使える。被毛の上からでもOK。 | 日常の全身ケア、シャンプー後の仕上げ。 |
| ローション/ジェル | 伸びが良く、皮膚に浸透しやすい。べたつきが少ない。 | 部分的な乾燥ケア、マッサージ。 |
| クリーム/軟膏 | 油分が多く高保湿。皮膚の保護膜を作る。 | 乾燥がひどい部位、肉球のひび割れ。 |
注目したい主要な保湿成分
保湿成分は、皮膚のバリア機能を補ったり、水分を抱え込んだりする役割があります。
保湿剤を選ぶ際は、愛犬の皮膚の状態に合わせて獣医師に相談し、舐めても安全な成分でできているかを確認しましょう。
犬の皮膚の保湿は、一度やれば終わりではありません。愛犬の健康と快適な生活を守るための継続的な習慣です。
日々の保湿ケアを続けることで、皮膚のバリア機能は強化され、かゆみや炎症の予防につながります。もし、皮膚に異変を感じたら、自己判断せずにすぐに獣医師に相談してください。
愛情を込めた日々のケアを通じて、愛犬の健康な皮膚と、より豊かな毎日をサポートしてあげましょう。
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獣医師 小林真也 Shinya Kobayashi
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特定の犬種に多く見られる「アロペシアX(Alopecia X)」は、原因不明の脱毛症であり、飼い主様を不安にさせる皮膚疾患の一つです。
本記事では、アロペシアXの基本的な知識から、症状、治療法、そしてこの疾患とどのように向き合っていくべきかについて、詳しく解説します。
アロペシアXとは?:別名「毛周期停止」
アロペシアXは、「脱毛症X」や「毛周期停止(Hair Cycle Arrest)」とも呼ばれる、犬に見られる原因不明の脱毛症です。
特徴は、炎症やかゆみを伴わない脱毛である点です。犬自身が不快感を感じることはほとんどありません。
好発犬種
アロペシアXは、特にポメラニアン(最も多く報告されています)、トイ・プードル、シベリアン・ハスキー、アラスカン・マラミュートなどの犬種で多く見られます。
発症年齢は1〜3歳頃のような若齢期に多いです 。
アロペシアXの症状:特徴的な脱毛パターン
アロペシアXの症状は非常に特徴的です。
1.非炎症性の脱毛:皮膚に赤みやかゆみなどの炎症は見られません。
2.脱毛部位:主に体幹(胴体)、首、太もも、尻尾などに左右対称性の脱毛が見られます。頭部と四肢の先端の毛は残ることが多いです。
3.皮膚の黒ずみ(色素沈着):脱毛した部分の皮膚が黒っぽく変色することがよく見られます。
アロペシアXの原因:「X」が意味するもの
アロペシアXの「X」は、原因不明であることを示しています。
毛の成長サイクル(毛周期)が途中で停止してしまうこと(毛周期停止)が原因であることはわかっていますが、なぜ毛が休止期に入ってしまい、成長期に移行できないのかは解明されていません。
一説では、人のAGA(男性型脱毛症)に近い病態があるのではないかと考えられています。
診断:他の疾患との鑑別(除外診断)
アロペシアXの診断は、特定の検査で確定できるものではなく、他の脱毛を引き起こす疾患を除外していく「除外診断」が基本となります。
・副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
・甲状腺機能低下症
・性ホルモン失調
・皮膚の感染症・アレルギー
これらの疾患がすべて否定され、特徴的な脱毛パターンが見られる場合に、アロペシアXと診断されます。
アロペシアXの治療法:長期的なアプローチ
アロペシアXは、生命に関わる病気ではないという認識が重要です。治療法は多岐にわたり、決定的な治療法は確立されていません。一つの治療法を数ヶ月試して効果がなければ、次の治療法に切り替えるという長期的なアプローチがとられます。
主な治療法(当院での治療法)
1,サプリメント療法
ビタミン剤、アミノ酸製剤、アルギット・ユッカ、5-ALA、必須脂肪酸、乳酸菌製剤、メラトニンなどのサプリメントを組み合わせて服用します。副作用も少なく、長期的に服用しても安全です。
2,血流改善薬
血流を改善することは、皮膚や毛根に栄養を効率よく送ることができるので、発毛効果が期待できます。
3,スキンケア
炭酸泉温浴や近赤外線治療により、血行を促進し発毛を促します。皮膚の保湿効果もあります。
4,再生医療
幹細胞上清液を用いて、成長因子を体内に取り入れていきます。基本的には皮下注射で実施します。
5,薬物療法
トリロスタン(クッシング症候群のお薬)、酢酸オサテロン(前立腺のお薬)、レボチロキシン(甲状腺のお薬)などがあります。副作用が出ることがあるので、定期的な血液検査が必要です。
当院では1、2、3、4のような安全性の高い治療法を組み合わせています。
反応がなかった場合は、ご相談の上、4の治療に進みます。
またこの病気の治療方法は情報がアップデートされますので、その都度新しい治療方法もご提案いたします。
アロペシアXとの向き合い方
アロペシアXは、見た目の問題であり、犬の生活の質(QOL)を大きく低下させるものではありません。
皮膚の保護:毛が抜けて皮膚が露出すると、乾燥や紫外線、外部の刺激に弱くなります。
まとめ
アロペシアXは、犬の特定の部位に非炎症性の脱毛が見られる、原因不明の皮膚疾患です。生命に危険を及ぼすものではなく、美容的な問題であるため、治療の選択肢は多岐にわたります。
愛犬の健康状態を正しく把握し、獣医師と相談しながら、愛犬にとって最も負担が少なく、飼い主様が納得できる方法で、この疾患と向き合っていくことが大切です。


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皮膚・耳専門・ヒフカフェ 動物病院
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