
東京都大田区田園調布1-61-10
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繰り返す皮膚のトラブル、その原因を考えたことはありますか?
愛犬の体にポツポツとした赤い湿疹やかさぶたを見つけ、動物病院で「膿皮症」と診断された経験を持つ飼い主様は非常に多いでしょう。膿皮症は犬の皮膚病の中で最も一般的なものの一つですが、同時に「一度治ってもすぐに再発する」「抗生剤を飲んでいる間は良いが、止めるとすぐに悪化する」といった悩みが絶えない疾患でもあります。
「うちの子は皮膚が弱い体質だから仕方ない」と諦めてしまう前に、なぜ膿皮症がこれほどまでに治りにくいのかを理解することが重要です。膿皮症が難治化・慢性化する背景には、単なる細菌感染だけではない、複雑な要因が絡み合っています。膿皮症が治らない3つの主要な理由と、それを克服するためのアプローチについて詳しく解説します。

理由①:薬が効かない「薬剤耐性菌」の出現
膿皮症の治療において、最も深刻な問題となっているのが薬剤耐性菌の存在です。膿皮症の主な原因菌は「ブドウ球菌」ですが、長期間にわたって抗生剤を漫然と使用し続けたり、症状が少し良くなったからと自己判断で投薬を中断したりすることで、菌が薬に対して抵抗力を持ってしまうことがあります。
特に近年では、多くの抗生剤が効かなくなった「多剤耐性ブドウ球菌(MRSPなど)」が検出されるケースが増えています。
もし、これまでの治療で効果が感じられない場合は、まず「薬剤感受性検査」を行う必要があります。これは、実際に愛犬の皮膚にいる菌を培養し、どの抗生剤が有効かを科学的に特定する検査です。耐性菌が疑われる場合、安易に強い薬に変えるのではなく、外用薬(塗り薬やシャンプー)を主軸に据えた治療への切り替えが検討されることもあります。
理由②:隠れた「基礎疾患」が見落とされている
膿皮症は、実は「単独で発生する病気」というよりも、何らかの別のトラブルによって皮膚の抵抗力が落ちた結果として起こる「二次的な症状」であることがほとんどです。つまり、火事に例えるなら、膿皮症は「炎」であり、その火をつけた「火種(基礎疾患)」が別に存在するのです。
基礎疾患が放置されたままでは、いくら抗生剤で一時的に菌を抑えても、薬を止めればすぐにまた菌が繁殖してしまいます。
膿皮症を繰り返す場合、それは皮膚だけの問題ではなく、全身の健康状態からのサインかもしれません。
代表的な基礎疾患には、以下のようなものがあります。
1.アレルギー性皮膚炎: 犬アトピー性皮膚炎や食物アレルギーは、皮膚のバリア機能を著しく低下させ、細菌の増殖を許してしまいます。
2.内分泌疾患(ホルモン異常): 甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)などは、皮膚の代謝を悪化させ、免疫力を低下させます。高齢になってから膿皮症を繰り返すようになった場合は、特に注意が必要です。
3.脂漏症: 皮脂の分泌が異常に多くなることで、菌の餌が増え、繁殖しやすい環境が作られます。
これらの基礎疾患を特定し、並行して治療を行わない限り、膿皮症の完治は望めません。血液検査やアレルギー検査を通じて、皮膚の裏側に潜む真の原因を突き止めることが、遠回りに見えて実は最短の解決策となります。
理由③:不適切なスキンケアとバリア機能の低下
「毎日一生懸命シャンプーしているのに治らない」という声をよく耳にします。しかし、その良かれと思っているケアが、逆に膿皮症を悪化させているケースも少なくありません。
健康な皮膚は「バリア機能」によって守られていますが、膿皮症の犬はこのバリアが壊れ、非常にデリケートな状態になっています。ここで、洗浄力の強すぎるシャンプーを使ったり、ゴシゴシと力任せに洗ったりすると、皮膚を保護している必要な脂分まで奪われ、さらにバリアが破壊されてしまいます。
スキンケアの間違い
また、薬用シャンプーの選択も重要です。膿皮症には抗菌成分(クロルヘキシジンなど)が含まれたシャンプーが有効ですが、皮膚の状態(乾燥しているのか、脂っぽいのか)に合わせて選ぶ必要があります。週に何回洗うべきか、何分間成分を浸透させるべきかといった「シャンプー療法」の詳細は、獣医師の指導のもとで行うことが成功の鍵となります。
難治性膿皮症を克服するための3つのステップ
治らない膿皮症に終止符を打つためには、これまでの「対症療法」から「根本治療」へとシフトする必要があります。
ステップ1:徹底した現状把握(検査)
まずは「今、どんな菌がいるのか(感受性検査)」と「なぜ菌が増えるのか(血液・アレルギー検査)」を明確にします。エビデンスに基づいた診断が、無駄な投薬を防ぎます。
ステップ2:多角的なアプローチの実施
内服薬だけに頼るのではなく、外用療法(シャンプー、保湿、塗り薬)、食事療法、そして基礎疾患の治療を同時に行います。最近では、当院では薬浴(消毒液と保湿液の混合した入浴剤を使用)や高濃度炭酸泉温浴などを活用したスキンケアも提案しています。

ステップ3:長期的な管理プランの決定
膿皮症は「治して終わり」ではなく、良い状態を「維持する」ことが目標になります。季節や体調に合わせたスキンケアプランを獣医師と共に作成し、再発の兆候をいち早く察知できる体制を整えましょう。
まとめ:諦める前にアプローチを変えてみよう
「膿皮症が治らない」という状況は、愛犬にとっても飼い主様にとっても非常にストレスなものです。しかし、ここまで述べてきた通り、治らないのには必ず理由があります。
薬剤耐性菌の問題、隠れた基礎疾患、そして日々のスキンケア。これらの一つひとつを丁寧に見直し、適切な対策を講じることで、長年悩まされていた皮膚トラブルが劇的に改善するケースは多々あります。
愛犬が痒みに悩まされることなく、穏やかに過ごせる毎日のために。今の治療に疑問を感じたら、一度立ち止まって、専門的な視点から皮膚の状態を再評価してみてはいかがでしょうか。当院では、皮膚の治療やケアを、その子に合わせたものをご提案しています。お気軽にご相談ください。
皮膚と耳専門 ヒフカフェ動物病院
獣医師 小林真也
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難治化の主な原因
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内容の詳細
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・耳垢石(じこうせき)
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長期間蓄積した耳垢が岩のように固まり、通常洗浄では除去不能になったもの。
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・バイオフィルム
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細菌が膜を張り、抗生剤や消毒液が届かないバリアを形成した状態。
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・中耳炎の併発
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鼓膜の奥(中耳)に炎症が波及しており、外側からの治療だけでは完治しない。
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・耳道の狭窄・増殖
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慢性的炎症や腫瘍などで耳道の皮膚が厚くなり、耳道内が狭くなる。
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愛犬や愛猫の被毛を撫でたとき、パラパラと落ちるフケや、毛が薄くなっている部分を見つけても、「季節の変わり目だから」「乾燥しているから」と、つい見過ごしてしまいがちです。
しかし、フケや脱毛は、皮膚病だけでなく、全身の病気が隠れているサインである可能性があります。
1.フケ・脱毛が示す3つの大きな原因
フケや脱毛は、皮膚のターンオーバーや毛周期の異常によって起こります。
その原因は大きく分けて以下の3つに分類されます。
(1) 外部からの刺激・感染(皮膚病)
最も一般的な原因で、皮膚そのものに問題があるケースです。
| 原因 | 特徴的な症状 |
| アレルギー性皮膚炎 | 強いかゆみ、赤み、自己誘発性の脱毛(舐めすぎ、掻きすぎ)。 |
| ノミ・ダニ | ノミの糞(黒い粒)、激しいかゆみ、特に背中や尾の付け根の脱毛(ノミアレルギー性皮膚 炎)。 |
| 膿皮症 | 赤いブツブツ(丘疹)、ニキビのような膿疱、フケ、かゆみ。特に脇や股、指の間など。 |
| 皮膚糸状菌症 | 円形脱毛、フケ、かゆみは軽度なことが多い。人にもうつる可能性あり。 |
| 乾燥・脂漏症 | 大量のフケ、ベタつき、体臭の悪化。 |
(2) 全身のホルモン異常(内分泌疾患)
皮膚は全身の状態を映す鏡です。ホルモンバランスの乱れが、フケや脱毛として現れることがあります。
これらの病気による脱毛は、かゆみを伴わないことが多く、飼い主様が「ただの換毛期かな?」と見過ごしがちです。
(3) ストレス・心因性
猫によく見られますが、犬でも起こります。環境の変化やストレスから、過剰に体を舐めたり噛んだりすることで、毛が抜けたり皮膚炎を起こしたりします。
2.「初期症状」チェックリスト
「かゆみ」や「赤み」は分かりやすいサインですが、皮膚病の初期には、もっと些細な変化が現れます。以下のチェックリストで、愛犬・愛猫の皮膚を毎日チェックしましょう。
| 観察ポイント | 見落としがちな初期サイン | 疑われる病気 |
| フケの質と量 | 「粉っぽいフケ」が特定の部位に集中している。 | 皮膚糸状菌症 |
| 脱毛のパターン | 「左右対称」に毛が薄くなっている(かゆみなし)。 | ホルモン異常(甲状腺、クッシングなど) |
| 毛の質感 | 毛がパサつく、「異常にベタつく」、体臭が強い。 | 脂漏症、マラセチア感染 |
| 行動の変化 | 掻く・舐める行動が多い。 | アレルギー性皮膚炎 |
| 体の特定部位 | 目の周り、耳のふち、口元など、顔周りの毛が薄くなっている。 | 真菌感染、毛包虫症 |
| 皮膚の感触 | 皮膚が「薄く」なっている。 | ホルモン異常 |
特に猫の飼い主様へ:
猫が毛づくろい(グルーミング)をする時間が異常に長くなっていたり、毛が短くなっている部分がないか、日常的に確認しましょう。
3.自宅でできる!皮膚の健康を守るための3つのケア
病気のサインを見つけたらすぐに動物病院を受診することが大切ですが、日頃のケアも皮膚の健康維持には欠かせません。
ケア1:適切なシャンプーとスキンケア
皮膚病の治療において、シャンプーは薬と同じくらい重要です。
ケア2:ノミ・ダニの徹底予防
ノミ・ダニは、皮膚病の最も一般的な原因の一つです。
ケア3:栄養バランスの取れた食事
皮膚の健康は、食事から摂取する栄養素に大きく左右されます。
フケや脱毛が続く場合は、食物アレルギーの可能性も考慮し、獣医師と相談して食事内容を見直すことも必要です。
4.まとめ:早期発見が皮膚病治療の鍵
フケや脱毛は、単なる美容の問題ではなく、「皮膚からのSOS」です。
自宅でできるチェックリストを活用し、愛犬・愛猫の皮膚を毎日観察する習慣をつけましょう。特に、かゆみを伴わない脱毛や、左右対称性の脱毛は、内分泌疾患などの全身性の病気のサインである可能性が高く、早期の血液検査が必要です。
皮膚病の治療は長期にわたることが多いですが、飼い主様の「気づき」と「根気強いケア」が、愛する家族の快適な生活を取り戻すための最大の力となります。
皮膚と耳専門 ヒフカフェ動物病院
獣医師 小林真也