
東京都大田区田園調布1-61-10
TEL.03-6459-7555
| 診療時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 10:00-18:30 | - | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
※月曜はカフェのテイクアウト営業のみ
休診日:月曜 ※日・祝日診療可 ※完全予約制
愛犬が体を掻く、手足を舐める、耳を頻繁に振る。こうした行動は、単なる癖ではなく、アレルギーという病気のサインかもしれません。犬のアレルギーは非常に多い疾患で、痒みによって愛犬の生活の質(QOL)を大きく低下させます。
アレルギーは完治が難しい慢性疾患ですが、適切な知識と対処法で症状をコントロールし、愛犬をサポートすることは可能です。犬のアレルギーの基本から、具体的な診断・治療法、日々の予防策まで解説します。愛犬の「かゆい」を解決し、健やかな毎日を送るための知識を深めていきましょう。
アレルギーとは、特定の物質(アレルゲン)に対して、体の免疫システムが過剰に反応してしまう状態を指します。本来、体を守るための免疫反応が、無害な物質に対してまで「敵」と認識し、攻撃を仕掛けてしまうのです。
犬のアレルギー症状は、皮膚・消化器・呼吸器に出ますが、その中でも皮膚に多く現れます。主な症状としては、かゆみ、皮膚の赤み、脱毛、フケ、そして慢性的な外耳炎などが挙げられます。特に、脇、股、指の間、耳、目の周りといった皮膚の薄い部分に症状が出やすい傾向があります。
アレルギーが起きる背景には、免疫の異常と皮膚のバリア機能の低下が深く関わっています。健康な皮膚は外部からの刺激やアレルゲンの侵入を防ぐ「バリア」として機能していますが、この機能が低下すると、アレルゲンが容易に体内に侵入し、過剰な免疫反応を引き起こしやすくなります。
犬のアレルギー疾患の中でも、特に発生頻度が高いとされるのが「食物アレルギー」「犬アトピー性皮膚炎(環境アレルギー)」「ノミアレルギー性皮膚炎」の三大アレルギーです。それぞれ原因や症状に特徴があります。
3-1. 食物アレルギー
食物アレルギーは、食べ物に含まれるタンパク質に対して免疫が過剰に反応することで起こります。犬の場合、牛肉、鶏肉、乳製品、小麦などが主なアレルゲンとして知られています。
症状は、皮膚の痒みや赤みとして現れることが多いですが、他のアレルギーと異なり、嘔吐や下痢といった消化器症状を伴うことがあるのが特徴です。診断には、アレルゲンとなり得る食材をすべて除去した食事(除去食)を一定期間(2ヶ月間)与え、症状が改善するかどうかを確認する除去食試験が基本となります。
3-2. 犬アトピー性皮膚炎(環境アレルギー)
犬アトピー性皮膚炎は、環境中に存在するアレルゲン(花粉、ハウスダスト、ダニ、カビなど)を吸い込んだり、皮膚から吸収したりすることで発症します。遺伝的な素因が関与していると考えられており、若齢期(生後6ヶ月から3歳頃)に発症することが多い疾患です。
症状は、季節性または通年性の強い痒みが特徴で、特に脇、股、指の間、耳、目の周りといった部位に集中して現れます。環境中のアレルゲンが原因であるため、アレルゲンを完全に排除することは難しく、長期的な管理が必要となります。
3-3. ノミアレルギー性皮膚炎
ノミアレルギー性皮膚炎は、ノミが吸血する際に注入する唾液に含まれる物質に対するアレルギー反応です。ノミの唾液は非常に強いアレルゲンであり、わずか数匹のノミの寄生であっても、激しいアレルギー症状を引き起こすことがあります。
症状は、腰部や尾の付け根に集中した強い痒みと皮膚炎が特徴です。ノミの寄生が見当たらない場合でも、過去の吸血によってアレルゲンが体内に残っている可能性があるため、診断には注意が必要です。
犬のアレルギーは原因が多岐にわたるため、正確な診断と適切な治療法の選択が重要です。
4-1. 診断の流れ
診断は、問診と身体検査から始まります。症状のパターン、食事内容、ノミ予防などを詳細に確認します。
次に、他の皮膚疾患(感染症、寄生虫症など)を除外するための検査を行います。
アレルギーが疑われる場合、以下の検査に進みます。
アレルギー検査はアレルゲンを特定する目的で行います。検査内容は血液で特異的IgE検査やリンパ球反応検査を調べます。食物アレルギーの確定診断にはアレルギー検査に加えて除去食試験が不可欠です。
4-2. 治療の基本方針
犬のアレルギーは完治が難しいですが、適切な治療と管理で症状をコントロールし、QOLを維持することは可能です。治療は、以下の治療方法を組み合わせながら、その子に合った方針を決めていきます。
・アレルゲンの回避
最も重要です。食物アレルギーはアレルゲンを含まない食事へ、アトピーは掃除や除湿で環境アレルゲンを減らします。ノミアレルギーは年間を通じたノミ・ダニ予防薬の投与が必須です。
・薬物療法
痒みや炎症を抑えるため、獣医師の指導のもとで薬物を使用します。
・ステロイド:強力な抗炎症作用がありますが、長期使用には副作用のリスクが伴います。
・抗ヒスタミン薬:軽度のアレルギーに用いられます。
・免疫抑制剤:免疫の過剰な反応を抑えます。
・JAK阻害薬・抗体医薬:痒みの伝達経路を特異的にブロックする新しい治療薬です。
・各種外用薬:局所的な痒みに対して効果的です。
・スキンケア
皮膚のバリア機能をサポートするため、薬用シャンプーや保湿剤を用いたスキンケアが重要です。アレルゲンや細菌を洗い流し、バリア機能の回復を促します。
・特異的免疫療法(減感作療法)
犬アトピー性皮膚炎の治療法の一つで、アレルゲンを少量ずつ投与し、体を慣らす根本的な体質改善を目指す治療法です。時間と費用がかかりますが、長期的な症状改善が期待できます。
・各種サプリメント
オメガ脂肪酸や腸活を摂取することで、皮膚のバリア機能の向上させ、免疫調整作用を助けることができます。
犬のアレルギーは、飼い主にとって根気が必要な病気ですが、現代の獣医療で症状を良好にコントロールすることは可能です。
アレルギーの治療は、決まった一つの治療があるわけではありません。それぞれの愛犬によって必要な治療が変わってきます。その子に合った治療とケアをしていくことが望まれます。獣医師と飼い主さんの二人三脚で進めていくことが大事です。
******************************************************
皮膚・耳専門・ヒフカフェ 動物病院
hiff cafe tamagawa
〒145-0071
東京都大田区田園調布1-61-10
TEL 03-6459-7555
獣医師 小林真也 Shinya Kobayashi
******************************************************