
東京都大田区田園調布1-61-10
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特定の犬種に多く見られる「アロペシアX(Alopecia X)」は、原因不明の脱毛症であり、飼い主様を不安にさせる皮膚疾患の一つです。
本記事では、アロペシアXの基本的な知識から、症状、治療法、そしてこの疾患とどのように向き合っていくべきかについて、詳しく解説します。
アロペシアXとは?:別名「毛周期停止」
アロペシアXは、「脱毛症X」や「毛周期停止(Hair Cycle Arrest)」とも呼ばれる、犬に見られる原因不明の脱毛症です。
特徴は、炎症やかゆみを伴わない脱毛である点です。犬自身が不快感を感じることはほとんどありません。
好発犬種
アロペシアXは、特にポメラニアン(最も多く報告されています)、トイ・プードル、シベリアン・ハスキー、アラスカン・マラミュートなどの犬種で多く見られます。
発症年齢は1〜3歳頃のような若齢期に多いです 。
アロペシアXの症状:特徴的な脱毛パターン
アロペシアXの症状は非常に特徴的です。
1.非炎症性の脱毛:皮膚に赤みやかゆみなどの炎症は見られません。
2.脱毛部位:主に体幹(胴体)、首、太もも、尻尾などに左右対称性の脱毛が見られます。頭部と四肢の先端の毛は残ることが多いです。
3.皮膚の黒ずみ(色素沈着):脱毛した部分の皮膚が黒っぽく変色することがよく見られます。
アロペシアXの原因:「X」が意味するもの
アロペシアXの「X」は、原因不明であることを示しています。
毛の成長サイクル(毛周期)が途中で停止してしまうこと(毛周期停止)が原因であることはわかっていますが、なぜ毛が休止期に入ってしまい、成長期に移行できないのかは解明されていません。
一説では、人のAGA(男性型脱毛症)に近い病態があるのではないかと考えられています。
診断:他の疾患との鑑別(除外診断)
アロペシアXの診断は、特定の検査で確定できるものではなく、他の脱毛を引き起こす疾患を除外していく「除外診断」が基本となります。
・副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
・甲状腺機能低下症
・性ホルモン失調
・皮膚の感染症・アレルギー
これらの疾患がすべて否定され、特徴的な脱毛パターンが見られる場合に、アロペシアXと診断されます。
アロペシアXの治療法:長期的なアプローチ
アロペシアXは、生命に関わる病気ではないという認識が重要です。治療法は多岐にわたり、決定的な治療法は確立されていません。一つの治療法を数ヶ月試して効果がなければ、次の治療法に切り替えるという長期的なアプローチがとられます。
主な治療法(当院での治療法)
1,サプリメント療法
ビタミン剤、アミノ酸製剤、アルギット・ユッカ、5-ALA、必須脂肪酸、乳酸菌製剤、メラトニンなどのサプリメントを組み合わせて服用します。副作用も少なく、長期的に服用しても安全です。
2,血流改善薬
血流を改善することは、皮膚や毛根に栄養を効率よく送ることができるので、発毛効果が期待できます。
3,スキンケア
炭酸泉温浴や近赤外線治療により、血行を促進し発毛を促します。皮膚の保湿効果もあります。
4,再生医療
幹細胞上清液を用いて、成長因子を体内に取り入れていきます。基本的には皮下注射で実施します。
5,薬物療法
トリロスタン(クッシング症候群のお薬)、酢酸オサテロン(前立腺のお薬)、レボチロキシン(甲状腺のお薬)などがあります。副作用が出ることがあるので、定期的な血液検査が必要です。
当院では1、2、3、4のような安全性の高い治療法を組み合わせています。
反応がなかった場合は、ご相談の上、4の治療に進みます。
またこの病気の治療方法は情報がアップデートされますので、その都度新しい治療方法もご提案いたします。
アロペシアXとの向き合い方
アロペシアXは、見た目の問題であり、犬の生活の質(QOL)を大きく低下させるものではありません。
皮膚の保護:毛が抜けて皮膚が露出すると、乾燥や紫外線、外部の刺激に弱くなります。
まとめ
アロペシアXは、犬の特定の部位に非炎症性の脱毛が見られる、原因不明の皮膚疾患です。生命に危険を及ぼすものではなく、美容的な問題であるため、治療の選択肢は多岐にわたります。
愛犬の健康状態を正しく把握し、獣医師と相談しながら、愛犬にとって最も負担が少なく、飼い主様が納得できる方法で、この疾患と向き合っていくことが大切です。

