大田区、目黒区、世田谷区、川崎市エリアの皮膚と耳専門の動物病院です。カフェトリミングサロンを併設しています

東京都大田区田園調布1-61-10

TEL.03-6459-7555

診療時間
10:00-18:30 -

※月曜はカフェのテイクアウト営業のみ
休診日:月曜  ※日・祝日診療可 ※完全予約制

治らない足舐め!それは本当に癖ですか?

・「ただの癖」と見過ごしていませんか?

 

愛犬がリラックスしている時、ふと見ると一心不乱に前足を舐めている。そんな光景を日常的に目にしている飼い主様は多いはずです。「うちの子はきれい好きなのかな?」「暇つぶしの癖かな?」と軽く考えてしまいがちですが、実はその「足舐め」には、愛犬が発している切実なSOSが隠されているかもしれません。

足舐めは、一度始まると非常に治りにくいトラブルの一つです。飼い主様が「ダメ!」と注意しても、目を離した隙にまた舐め始める。エリザベスカラーを外せば、待ってましたと言わんばかりに足先を真っ赤に腫れ上がるまで舐め続けてしまう。そんな「治らない足舐め」に頭を抱えている方へ向けて、足舐めの裏に潜む本当の理由を詳しく解説します。

 

理由①:「痒み」や「痛み」が原因になっている

犬が足を舐める最も直接的な理由は、そこに「不快感」があるからです。しかし、その不快感の正体は、目に見える炎症だけとは限りません。

多くの場合、足舐めは指間炎・趾間炎から始まります。指の間の湿った環境で細菌マラセチア(カビの一種)が増殖し、強い痒みを引き起こします。また、アレルギー性皮膚炎(アトピーや食物アレルギー)の初期症状として、足先だけに痒みが出ることも珍しくありません。

 

指間炎/趾間炎・マラセチア感染:指や肉球の間が赤く腫れ、独特のニオイがする。

アレルギー性皮膚炎:季節性があったり、特定の食べ物に関連して痒みが強まったりする。

関節痛・神経痛:皮膚に異常がないのに、特定の部位を執拗に舐める。高齢犬に多い。

異物の付着・外傷:ノギ(植物の種)が刺さっていたり、肉球に小さな傷があったりする。

 

意外に見落とされがちなのが、「痛み」による足舐めです。関節炎腰の痛み(ヘルニアなど)がある場合、犬はその違和感や鈍痛を紛らわすために、関連する部位や、あるいは全く別の場所(前足など)を舐めることがあります。これは人間が痛いところをさする行動に似ています。皮膚の検査で異常がないのに足舐めが治らない場合、整形外科的なアプローチが必要なケースもあるのです。

 

理由②:心理的な「ストレス」と「強迫観念」

医学的な原因が解決した後も足舐めが続く、あるいは最初から皮膚に異常がない場合、それは心因性(心理的要因)の可能性があります。これを「舐性皮膚炎(しせいひふえん)」と呼びます。

犬は不安や退屈、孤独感を感じると、自分を落ち着かせるために体を舐めることがあります。舐めるという行為は、犬の脳内でエンドルフィンという快感物質を放出させます。これにより、一時的にストレスが緩和されるため、犬は「嫌なことがあったら舐める」という学習をしてしまいます。

恐ろしいのは、この行動がエスカレートすると「依存症」のような状態になることです。

最初は単なる暇つぶしだったものが、次第に自分の意志では止められない「強迫観念」へと変わっていきます。こうなると、もはや痒いから舐めるのではなく、「舐めずにはいられない」という精神的な問題へと発展してしまいます。環境の変化(引っ越し、家族構成の変化、留守番時間の増加)が引き金になることが多いため、愛犬の生活環境を振り返ってみることも重要です。

 

理由③:環境的な要因と「お手入れ」の落とし穴

日々の良かれと思っているケアが、実は足舐めを誘発していることもあります。

例えば、お散歩後の足拭きです。濡れたタオルでゴシゴシと強く拭きすぎると、皮膚のバリア機能が壊れてしまいます。さらに、指の間が湿ったまま放置されると、細菌が繁殖する絶好の場となってしまいます。また、お散歩コースに撒かれた除草剤や融雪剤、室内で使っている床のワックスなどが皮膚を刺激し、接触性皮膚炎を起こしている可能性も考えられます。

足裏の毛が伸びすぎていることも要因の一つです。毛が伸びていると、指の間の通気性が悪くなり、蒸れやすくなります。また、フローリングで滑りやすくなることで足腰に負担がかかり、それが前述の「痛みによる足舐め」につながるという悪循環も生まれます。

 

・「治らない足舐め」を止めるための4つのアプローチ

足舐めを根本から解決するには、単に「舐めさせない」だけでなく、多角的なアプローチが必要です。

 

  1. 徹底的な検査

まずは動物病院で、細菌や真菌の感染がないか、アレルギーの可能性はないか、そして関節や神経に異常がないかをしっかり診てもらいましょう。原因に合わせた投薬(抗生剤、抗真菌薬、痒み止め、鎮痛剤など)を行うことが大前提です。

  1. 皮膚の保護

炎症がひどい時は、一時的にエリザベスカラーや靴下、包帯などを使って物理的に舐められないようにします。ただし、これはあくまで「応急処置」です。これだけで治そうとすると、外した瞬間にリバウンドで激しく舐めてしまうため、必ず他の対策と併用します。

  1. 環境改善とストレスケア

「退屈」をさせない工夫をしましょう。お散歩のルートを変えて刺激を与えたり、知育玩具(フードを詰めるおもちゃなど)を使って頭を使わせる時間を増やしたりします。飼い主様とのコミュニケーションの質を高めることも、不安解消に大きく貢献します。

  1. 行動学的アプローチ

心因性の要因が強い場合は、ドッグトレーナーや行動学に詳しい獣医師の助けを借りることも検討してください。場合によっては、脳内の興奮を抑える抗不安薬などを使用することで、舐めるという強迫観念を和らげ、治療をスムーズに進められるようになります。

 

・まとめ:足舐めは愛犬からの「SOS」かもしれない

 

「足舐めなんて、そのうち治るだろう」「ただの癖だから」と放置してしまうと、皮膚が硬く象の皮膚のように厚くなったり(苔癬化)、深い潰瘍になったりして、治療がさらに困難になります。

足舐めは、愛犬が抱えている「痒み」「痛み」「不安」の表れです。そのサインをいち早く受け止め、原因を一つひとつ紐解いていくことが、飼い主様にできる最大のサポートです。

もし、あなたの愛犬が今日も一生懸命に足を舐めているなら、それは「助けて」のサインかもしれません。癖と決めつけず、まずは獣医師に相談し、愛犬が心身ともにリラックスして過ごせる日々を取り戻してあげましょう。

 

皮膚と耳専門 ヒフカフェ動物病院

獣医師 小林真也

 

Information

治らない足舐め!それは本当に癖ですか?

・「ただの癖」と見過ごしていませんか?

 

愛犬がリラックスしている時、ふと見ると一心不乱に前足を舐めている。そんな光景を日常的に目にしている飼い主様は多いはずです。「うちの子はきれい好きなのかな?」「暇つぶしの癖かな?」と軽く考えてしまいがちですが、実はその「足舐め」には、愛犬が発している切実なSOSが隠されているかもしれません。

足舐めは、一度始まると非常に治りにくいトラブルの一つです。飼い主様が「ダメ!」と注意しても、目を離した隙にまた舐め始める。エリザベスカラーを外せば、待ってましたと言わんばかりに足先を真っ赤に腫れ上がるまで舐め続けてしまう。そんな「治らない足舐め」に頭を抱えている方へ向けて、足舐めの裏に潜む本当の理由を詳しく解説します。

 

理由①:「痒み」や「痛み」が原因になっている

犬が足を舐める最も直接的な理由は、そこに「不快感」があるからです。しかし、その不快感の正体は、目に見える炎症だけとは限りません。

多くの場合、足舐めは指間炎・趾間炎から始まります。指の間の湿った環境で細菌マラセチア(カビの一種)が増殖し、強い痒みを引き起こします。また、アレルギー性皮膚炎(アトピーや食物アレルギー)の初期症状として、足先だけに痒みが出ることも珍しくありません。

 

指間炎/趾間炎・マラセチア感染:指や肉球の間が赤く腫れ、独特のニオイがする。

アレルギー性皮膚炎:季節性があったり、特定の食べ物に関連して痒みが強まったりする。

関節痛・神経痛:皮膚に異常がないのに、特定の部位を執拗に舐める。高齢犬に多い。

異物の付着・外傷:ノギ(植物の種)が刺さっていたり、肉球に小さな傷があったりする。

 

意外に見落とされがちなのが、「痛み」による足舐めです。関節炎腰の痛み(ヘルニアなど)がある場合、犬はその違和感や鈍痛を紛らわすために、関連する部位や、あるいは全く別の場所(前足など)を舐めることがあります。これは人間が痛いところをさする行動に似ています。皮膚の検査で異常がないのに足舐めが治らない場合、整形外科的なアプローチが必要なケースもあるのです。

 

理由②:心理的な「ストレス」と「強迫観念」

医学的な原因が解決した後も足舐めが続く、あるいは最初から皮膚に異常がない場合、それは心因性(心理的要因)の可能性があります。これを「舐性皮膚炎(しせいひふえん)」と呼びます。

犬は不安や退屈、孤独感を感じると、自分を落ち着かせるために体を舐めることがあります。舐めるという行為は、犬の脳内でエンドルフィンという快感物質を放出させます。これにより、一時的にストレスが緩和されるため、犬は「嫌なことがあったら舐める」という学習をしてしまいます。

恐ろしいのは、この行動がエスカレートすると「依存症」のような状態になることです。

最初は単なる暇つぶしだったものが、次第に自分の意志では止められない「強迫観念」へと変わっていきます。こうなると、もはや痒いから舐めるのではなく、「舐めずにはいられない」という精神的な問題へと発展してしまいます。環境の変化(引っ越し、家族構成の変化、留守番時間の増加)が引き金になることが多いため、愛犬の生活環境を振り返ってみることも重要です。

 

理由③:環境的な要因と「お手入れ」の落とし穴

日々の良かれと思っているケアが、実は足舐めを誘発していることもあります。

例えば、お散歩後の足拭きです。濡れたタオルでゴシゴシと強く拭きすぎると、皮膚のバリア機能が壊れてしまいます。さらに、指の間が湿ったまま放置されると、細菌が繁殖する絶好の場となってしまいます。また、お散歩コースに撒かれた除草剤や融雪剤、室内で使っている床のワックスなどが皮膚を刺激し、接触性皮膚炎を起こしている可能性も考えられます。

足裏の毛が伸びすぎていることも要因の一つです。毛が伸びていると、指の間の通気性が悪くなり、蒸れやすくなります。また、フローリングで滑りやすくなることで足腰に負担がかかり、それが前述の「痛みによる足舐め」につながるという悪循環も生まれます。

 

・「治らない足舐め」を止めるための4つのアプローチ

足舐めを根本から解決するには、単に「舐めさせない」だけでなく、多角的なアプローチが必要です。

 

  1. 徹底的な検査

まずは動物病院で、細菌や真菌の感染がないか、アレルギーの可能性はないか、そして関節や神経に異常がないかをしっかり診てもらいましょう。原因に合わせた投薬(抗生剤、抗真菌薬、痒み止め、鎮痛剤など)を行うことが大前提です。

  1. 皮膚の保護

炎症がひどい時は、一時的にエリザベスカラーや靴下、包帯などを使って物理的に舐められないようにします。ただし、これはあくまで「応急処置」です。これだけで治そうとすると、外した瞬間にリバウンドで激しく舐めてしまうため、必ず他の対策と併用します。

  1. 環境改善とストレスケア

「退屈」をさせない工夫をしましょう。お散歩のルートを変えて刺激を与えたり、知育玩具(フードを詰めるおもちゃなど)を使って頭を使わせる時間を増やしたりします。飼い主様とのコミュニケーションの質を高めることも、不安解消に大きく貢献します。

  1. 行動学的アプローチ

心因性の要因が強い場合は、ドッグトレーナーや行動学に詳しい獣医師の助けを借りることも検討してください。場合によっては、脳内の興奮を抑える抗不安薬などを使用することで、舐めるという強迫観念を和らげ、治療をスムーズに進められるようになります。

 

・まとめ:足舐めは愛犬からの「SOS」かもしれない

 

「足舐めなんて、そのうち治るだろう」「ただの癖だから」と放置してしまうと、皮膚が硬く象の皮膚のように厚くなったり(苔癬化)、深い潰瘍になったりして、治療がさらに困難になります。

足舐めは、愛犬が抱えている「痒み」「痛み」「不安」の表れです。そのサインをいち早く受け止め、原因を一つひとつ紐解いていくことが、飼い主様にできる最大のサポートです。

もし、あなたの愛犬が今日も一生懸命に足を舐めているなら、それは「助けて」のサインかもしれません。癖と決めつけず、まずは獣医師に相談し、愛犬が心身ともにリラックスして過ごせる日々を取り戻してあげましょう。

 

皮膚と耳専門 ヒフカフェ動物病院

獣医師 小林真也