大田区、目黒区、世田谷区、川崎市エリアの皮膚と耳専門の動物病院です。カフェトリミングサロンを併設しています

東京都大田区田園調布1-61-10

TEL.03-6459-7555

診療時間
10:00-18:30 -

※月曜はカフェのテイクアウト営業のみ
休診日:月曜  ※日・祝日診療可 ※完全予約制

治らない脱毛症!諦める前にできることは。

愛犬の背中の毛が薄くなってきた、お腹の地肌が透けて見えるようになった、あるいはポメラニアンのようなフワフワの毛がパサパサになり、ついには生えてこなくなった……。そんな愛犬の姿を見て、「何か大きな病気なのではないか」「もう元の姿には戻れないのか」と、不安を感じている飼い主様は少なくありません。

脱毛症は、膿皮症や外耳炎のように激しい痒みや痛みを伴うことは少ないかもしれません。しかし、見た目の変化が非常に大きいため、散歩中に人目が気になったり、自分のお手入れが足りないのではないかと自責の念に駆られたりするなど、飼い主様の精神的な負担が非常に重い疾患でもあります。

「いろいろな治療を試したけれど、一向に毛が生えてこない」と諦めてしまう前に、一度立ち止まって考えてみましょう。脱毛が治らない理由を整理し、今からでもできるアプローチについて詳しく解説します。

 

理由①:毛周期停止を起こす「内分泌疾患」

犬の毛は、常に伸び続けているわけではありません。「成長期」に伸び、「退行期」を経て「休止期」に入り、やがて抜けて新しい毛に代わるというサイクル(毛周期)を繰り返しています。このサイクルをコントロールしているのが、体内のホルモンです。

もし、愛犬が「痒がっていないのに左右対称に毛が抜ける」「皮膚が黒ずんできた」「元気がなく、太りやすくなった」といった症状を伴っている場合、内分泌疾患(ホルモン疾患)が原因である可能性が高いです。

甲状腺機能低下症

代謝を司る甲状腺ホルモンが不足し、毛のサイクルが「休止期」で止まってしまう。尾の毛が抜ける(ラットテイル)こともある。

副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)

ステロイドホルモンが過剰になり、皮膚が薄くなって脱毛する。多飲多尿や腹部膨満を伴うことが多い。

性ホルモン失調

未去勢や未避妊による性ホルモンの影響や、精巣・卵巣の腫瘍によって脱毛が起こる。

 

これらの疾患は、血液検査で診断が可能です。重要なのは、これらは「皮膚の病気」ではなく「全身の病気」であるという点です。適切な投薬によってホルモンバランスを整えることで、止まっていた毛のサイクルが再び動き出し、数ヶ月後には見違えるほどフサフサに戻るケースも珍しくありません。

 

理由②:「アロペシアX(脱毛症X)」

ポメラニアントイプードルなどの犬種で、ホルモン検査をしても異常がないのに、首から胴体にかけて広範囲に毛が抜けてしまうことがあります。これが、原因がいまだ解明されていない「アロペシアX(脱毛症X)」です。

「X」という名前が示す通り、かつては「偽クッシング症候群」や「成長ホルモン反応性脱毛症」など様々な名前で呼ばれてきました。この疾患の最大の特徴は、「健康状態には全く問題がないが、毛だけが生えない」という点です。

アロペシアXは、命に関わる病気ではありません。しかし、見た目の変化が飼い主様にとって大きなストレスとなるため、治療を希望される方が多い疾患です。

アロペシアXの治療には、決定的な特効薬はありませんが、以下のような多角的なアプローチが試みられています。

 

  • メラトニン療法: 睡眠に関わるホルモンであるメラトニンを投与することで、毛周期を刺激します。副作用が少なく、比較的安全に試せる方法です。
  • サプリメント療法: 脂肪酸や亜鉛、あるいは発毛をサポートする特定の成分を含んだサプリメントを活用します。
  • 皮膚への物理的刺激: マイクロニードルや近赤外線治療器を用いて皮膚を刺激し、休止期にある毛包を強制的に成長期へと移行させる試みが行われています。

 

理由③:免疫疾患や栄養不足が原因かも

内分泌疾患でもアロペシアXでもない場合、自分の免疫細胞が誤って毛包(毛の根元)を攻撃してしまう「免疫介在性脱毛症」の可能性があります。また、遺伝的に特定の部位の毛が薄くなる「パターン脱毛症」なども存在します。

さらに、意外と見落とされがちなのが「栄養不足」「腸内環境」です。毛の主成分はタンパク質(ケラチン)です。良質なタンパク質が不足していたり、腸の状態が悪くて栄養を十分に吸収できていなかったりすると、体は命に関わる臓器へ優先的に栄養を送り、命に関わらない「毛」への供給を後回しにしてしまいます。

「高いフードをあげているから大丈夫」と思っていても、その子の体質に合っていなければ意味がありません。皮膚のバリア機能を高める必須脂肪酸や、毛の合成を助けるビタミン・ミネラルが不足していないか、今一度食事内容を見直す価値はあります。

 

諦める前に試したい「発毛への3つのステップ」

「もう何をやってもダメだった」と感じている飼い主様へ、改めて提案したいステップがあります。

ステップ1:徹底した「除外診断」をやり直す

脱毛の原因は多岐にわたります。まずは、ニキビダニや真菌(カビ)などの感染症がないか、そしてホルモン検査の結果に漏れがないか、皮膚科に強い獣医師による再評価を受けることが第一歩です。

ステップ2:内側からの「土壌改良」

毛が生えるための「土壌」である体を整えます。腸内環境を整えるプロバイオティクスの摂取や、皮膚の代謝を助けるサプリメントの導入、そしてその子の消化能力に合った食事への変更を検討します。

ステップ3:外側からの「刺激」

止まっている毛根に「毛を作れ」という信号を送ります。保湿を徹底して皮膚の乾燥を防ぎ、血行を促進するマッサージや、近赤外線療法や炭酸泉温浴などを組み合わせることで、眠っていた毛根が目を覚ますことがあります。

 

まとめ:毛が生えることだけがゴールではない

脱毛症の治療は、一朝一夕にはいきません。毛のサイクルが変わるまでには最低でも3ヶ月、長ければ1年以上の根気強い取り組みが必要です。

そして、最後に一つお伝えしたいことがあります。それは、「たとえ毛が生え揃わなかったとしても、愛犬の価値は少しも変わらない」ということです。毛が薄くても、愛犬が痒みや痛みなく、毎日を楽しく過ごせているのであれば、それは一つの「成功」と言えるのではないでしょうか。

「治らない」と決めつける前に、今の愛犬の状態を正しく理解し、できる限りのケアをしてあげること。その愛情こそが、愛犬にとって最も必要な栄養素かもしれません。諦める前に、もう一度だけ、新しい選択肢を探してみましょう。

当院では脱毛症の治療に力を入れています。お気軽にご相談ください。

 

皮膚科・耳科専門 ヒフカフェ動物病院

獣医師 小林真也

Information

治らない脱毛症!諦める前にできることは。

愛犬の背中の毛が薄くなってきた、お腹の地肌が透けて見えるようになった、あるいはポメラニアンのようなフワフワの毛がパサパサになり、ついには生えてこなくなった……。そんな愛犬の姿を見て、「何か大きな病気なのではないか」「もう元の姿には戻れないのか」と、不安を感じている飼い主様は少なくありません。

脱毛症は、膿皮症や外耳炎のように激しい痒みや痛みを伴うことは少ないかもしれません。しかし、見た目の変化が非常に大きいため、散歩中に人目が気になったり、自分のお手入れが足りないのではないかと自責の念に駆られたりするなど、飼い主様の精神的な負担が非常に重い疾患でもあります。

「いろいろな治療を試したけれど、一向に毛が生えてこない」と諦めてしまう前に、一度立ち止まって考えてみましょう。脱毛が治らない理由を整理し、今からでもできるアプローチについて詳しく解説します。

 

理由①:毛周期停止を起こす「内分泌疾患」

犬の毛は、常に伸び続けているわけではありません。「成長期」に伸び、「退行期」を経て「休止期」に入り、やがて抜けて新しい毛に代わるというサイクル(毛周期)を繰り返しています。このサイクルをコントロールしているのが、体内のホルモンです。

もし、愛犬が「痒がっていないのに左右対称に毛が抜ける」「皮膚が黒ずんできた」「元気がなく、太りやすくなった」といった症状を伴っている場合、内分泌疾患(ホルモン疾患)が原因である可能性が高いです。

甲状腺機能低下症

代謝を司る甲状腺ホルモンが不足し、毛のサイクルが「休止期」で止まってしまう。尾の毛が抜ける(ラットテイル)こともある。

副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)

ステロイドホルモンが過剰になり、皮膚が薄くなって脱毛する。多飲多尿や腹部膨満を伴うことが多い。

性ホルモン失調

未去勢や未避妊による性ホルモンの影響や、精巣・卵巣の腫瘍によって脱毛が起こる。

 

これらの疾患は、血液検査で診断が可能です。重要なのは、これらは「皮膚の病気」ではなく「全身の病気」であるという点です。適切な投薬によってホルモンバランスを整えることで、止まっていた毛のサイクルが再び動き出し、数ヶ月後には見違えるほどフサフサに戻るケースも珍しくありません。

 

理由②:「アロペシアX(脱毛症X)」

ポメラニアントイプードルなどの犬種で、ホルモン検査をしても異常がないのに、首から胴体にかけて広範囲に毛が抜けてしまうことがあります。これが、原因がいまだ解明されていない「アロペシアX(脱毛症X)」です。

「X」という名前が示す通り、かつては「偽クッシング症候群」や「成長ホルモン反応性脱毛症」など様々な名前で呼ばれてきました。この疾患の最大の特徴は、「健康状態には全く問題がないが、毛だけが生えない」という点です。

アロペシアXは、命に関わる病気ではありません。しかし、見た目の変化が飼い主様にとって大きなストレスとなるため、治療を希望される方が多い疾患です。

アロペシアXの治療には、決定的な特効薬はありませんが、以下のような多角的なアプローチが試みられています。

 

  • メラトニン療法: 睡眠に関わるホルモンであるメラトニンを投与することで、毛周期を刺激します。副作用が少なく、比較的安全に試せる方法です。
  • サプリメント療法: 脂肪酸や亜鉛、あるいは発毛をサポートする特定の成分を含んだサプリメントを活用します。
  • 皮膚への物理的刺激: マイクロニードルや近赤外線治療器を用いて皮膚を刺激し、休止期にある毛包を強制的に成長期へと移行させる試みが行われています。

 

理由③:免疫疾患や栄養不足が原因かも

内分泌疾患でもアロペシアXでもない場合、自分の免疫細胞が誤って毛包(毛の根元)を攻撃してしまう「免疫介在性脱毛症」の可能性があります。また、遺伝的に特定の部位の毛が薄くなる「パターン脱毛症」なども存在します。

さらに、意外と見落とされがちなのが「栄養不足」「腸内環境」です。毛の主成分はタンパク質(ケラチン)です。良質なタンパク質が不足していたり、腸の状態が悪くて栄養を十分に吸収できていなかったりすると、体は命に関わる臓器へ優先的に栄養を送り、命に関わらない「毛」への供給を後回しにしてしまいます。

「高いフードをあげているから大丈夫」と思っていても、その子の体質に合っていなければ意味がありません。皮膚のバリア機能を高める必須脂肪酸や、毛の合成を助けるビタミン・ミネラルが不足していないか、今一度食事内容を見直す価値はあります。

 

諦める前に試したい「発毛への3つのステップ」

「もう何をやってもダメだった」と感じている飼い主様へ、改めて提案したいステップがあります。

ステップ1:徹底した「除外診断」をやり直す

脱毛の原因は多岐にわたります。まずは、ニキビダニや真菌(カビ)などの感染症がないか、そしてホルモン検査の結果に漏れがないか、皮膚科に強い獣医師による再評価を受けることが第一歩です。

ステップ2:内側からの「土壌改良」

毛が生えるための「土壌」である体を整えます。腸内環境を整えるプロバイオティクスの摂取や、皮膚の代謝を助けるサプリメントの導入、そしてその子の消化能力に合った食事への変更を検討します。

ステップ3:外側からの「刺激」

止まっている毛根に「毛を作れ」という信号を送ります。保湿を徹底して皮膚の乾燥を防ぎ、血行を促進するマッサージや、近赤外線療法や炭酸泉温浴などを組み合わせることで、眠っていた毛根が目を覚ますことがあります。

 

まとめ:毛が生えることだけがゴールではない

脱毛症の治療は、一朝一夕にはいきません。毛のサイクルが変わるまでには最低でも3ヶ月、長ければ1年以上の根気強い取り組みが必要です。

そして、最後に一つお伝えしたいことがあります。それは、「たとえ毛が生え揃わなかったとしても、愛犬の価値は少しも変わらない」ということです。毛が薄くても、愛犬が痒みや痛みなく、毎日を楽しく過ごせているのであれば、それは一つの「成功」と言えるのではないでしょうか。

「治らない」と決めつける前に、今の愛犬の状態を正しく理解し、できる限りのケアをしてあげること。その愛情こそが、愛犬にとって最も必要な栄養素かもしれません。諦める前に、もう一度だけ、新しい選択肢を探してみましょう。

当院では脱毛症の治療に力を入れています。お気軽にご相談ください。

 

皮膚科・耳科専門 ヒフカフェ動物病院

獣医師 小林真也